◆「髪の毛を弾がかすめていた」という新事実
第4回公判で証言したヤスオカ氏は検察官に「被害者の他に銃弾が当たった人がいなかったか」と聞かれ、「被害者が演説したゾーンには14人いた。被害者のすぐ後ろにいた、自民党(奈良県連)の桜井大輔青年局長の頭髪が跳ね上がったことが、鹿島建設が現場を防犯カメラで撮っていた映像、車のドライブレコーダー、自民党員のスマホ動画などで確認できた。髪の毛を弾がかすめていた」と証言した。今まで報道されていない新「事実」だ。弁護人が「風で髪がなびいた可能性はないか」と質したのに対し、「総合的に判断して、鉛弾が頭髪に当たったと見ている」と断言した。県警は桜井氏に確認したのであろうか。主要メディアは桜井氏を仮名にしている。
◆犯行で使われた手製銃が裁判員の手に

6日の第6回公判では、事件で使用された手製パイプ銃を鑑定したカネヒラタ氏は、7丁の手製銃がいずれも実際に発射でき、殺傷能力も認められたと証言した。実験に当たっては、山上被告に面会し、実験に立ち会ってもらい、銃、弾丸の作り方について説明を受けて再現実験を行ったという。
手製銃と鉄パイプの発射実験を撮影した動画をモニターで上映。弾丸6個がバラバラに飛ぶ映像もあった。裁判員らが銃の現物を手にする様子を山上被告はちらっと見たが、無表情で手元の書面を見ていた。
安倍氏を師と仰ぐ、高市首相ら安倍政治を継承する政治家が復権した自維野合政権の下で、高市氏の地元奈良の裁判所で審理される裁判。政治的背景を踏まえ、司法が公正さを保てるか注視したい。
裁判は12月18日に結審の予定。判決は来年1月21日に言い渡される。<取材・文・写真/浅野健一>
【浅野健一】
1948年、香川県高松市生まれ。72年、共同通信社に入社。84年『犯罪報道の犯罪』(学陽書房)を発表。ジャカルタ支局長など歴任。94年に退社。94年から2014年まで同志社大学大学院メディア学専攻教授。人権と報道・連絡会代表世話人。『記者クラブ解体新書』(現代人文社)『安倍政権・言論弾圧の犯罪』(社会評論社)『生涯一記者 権力監視のジャーナリズム提言』(社会評論社)など著書多数。 Xアカウント:@hCHKK4SFYaKY1Su

