◆日本語ができるタイ人教諭を探し求める

そのため、日本人保育士はもちろんだが、同園ではタイ人保育士の採用にも日本語を必須とした。しかし、ただでさえ日本人向け教育施設が珍しい外国では日本語ができる現地人保育士の募集はかなり難しい。他園に勤める保育士もいるにはいるが、そう応募はこない。
そこで夫妻はまず日本語学習に意欲的な人を求めることにした。日本語学科を卒業して日系企業や日本に関係した仕事をしたい人を募集し、採用後にタイの保育士免許を取得させたのだ。
タイさくらキッズはアットホームで小回りの利く小規模のこども園だ。他園と比べて崎村夫妻と職員、子ども、それぞれの距離感が非常に近いため、日々現場で保育のやり方を教えていけばいい。タイではローカルスタッフがなかなか定着しないといわれる中、現に開園当初からいるタイ人の先生は取材時もちゃんと在籍しており、顔つきもだいぶ先生らしくなっていた。筆者はすでに開園直後にも別件で取材をしたことがあるので、一応ビフォーアフターを見ている。タイさくらキッズの日本語ができる保育士が常駐する。園の強みがまたひとつできた。
◆「食」にこだわるのも園の柱のひとつ

「結局、健康な心身を支えるのは、どこまで行っても食べものなんですよ」(健司さん)
日本やタイは食べものが豊富なのは事実だ。一方でよりよい食べものをみつけるにはしっかりとした知識が必要になってもいる。そんな現代だからこそ「この年齢から食べもの本来の味を知っている味覚を育ててあげること。もうひとつは食と健康のつながりを知ること。これらがお子さんの将来の財産になる」とのりこさん。
実はのりこさんは健司さんのインド赴任に際して勤めを辞めている。インドやタイの生活で自由な時間ができたこともあって、夫と3人の子どものしっかりとした食生活を考えるようになり、栄養学などに関する資格を取得するに至っている。
ただ、このときの資格取得はあくまでも家族のためのものだった。のちに夫がこども園開園を考えはじめたことで、結果的にのりこさんの資格が活きる形となり、実際に園が動きだした今になって、多くの子どもたちの役に立つことになった。
開園からおよそ1年が経つ現在も常にアンテナを張って、食材の仕入れ先も順次よりよいところに変えている。
「タイには身体にいいものをこだわりを持って造る人がたくさんいるんです」(健司さん)
タイ人だけでなく、日本人などいろいろな国の人がタイ国内でさまざまな食べものの生産にかかわっている。開園当初はスーパーなどでオーガニックと表記された野菜などを選ぶようにしていたが、現在は各種専門家の店から仕入れるルートも構築した。魚は豊洲から入れる寿司用鮮魚の日本人経営卸会社から、野菜は自社農園で何十年もオーガニック生産を続ける老舗ショップからなどだ。

