
最近よく眠れない、眠りが浅くなった⋯⋯それは更年期のせいかもしれません。
更年期に多く見られる不調のひとつが不眠。
その原因と、安眠を促すアロマ経絡マッサージについて、東洋医学の視点で解説します。
更年期の不眠は「心腎不交(しんじんふこう)」が原因

ベッドに入ってもなかなか寝つけない、夜中に目が覚める、のぼせて寝苦しい⋯⋯更年期になると、こうした不眠症状がよく見られるように。東洋医学では、このような更年期の不眠の多くは「心腎不交(しんじんふこう)」が原因だと考えられています。
心腎不交とは、五臓の心(しん)と腎(じん)の交流がうまくいっていないという意味。「更年期の養生 Vol.1」でもお伝えしましたが、腎とは体全体の“生命力の源”であり、自然界に置き換えると海のような役割をになう臓。腰のあたりに位置しています。一方、心は胸のあたりに位置していて、血液循環によって体全体に熱をめぐらせる存在。自然界に置き換えると太陽のような役割です。
心と腎の交流とは、心の熱が腎を温め、腎の水分が心の熱をやわらげるという循環のこと。
これは、太陽が海を温め、海の水分が蒸発して太陽の熱をやわらげるという自然界の循環と同じ営み。心と腎の間を熱と水分がぐるぐる回ることで、上半身と下半身の熱と水分のバランスがうまく均衡を保っています。
しかし更年期になると、腎の水分が不足する「腎陰虚(じんいんきょ=詳細はVol.1)」の傾向に。これはいわば、海の水が少なくなって太陽の熱が過剰になっているような状態。腎の水分が不足しているために心の熱を十分にやわらげることができず、上半身に熱がたまって頭部や胸の周辺に強い熱感が生じるのです。
五臓の心は血液循環機能のほかに、「心」=「こころ」の働きもになっています。心の熱が過剰になると、こころにもカッカと熱がたまって精神的に不安定な状態に。イライラして寝つけない、夢をよく見る、夜中に何度も目が覚めるなどの不眠症状のほか、動悸や不安感などの原因にもなります。
心の熱を鎮め、腎の水分を補うアロマをブレンドしたマッサージオイル

心腎不交による不眠をやわらげるには、頭部や胸周辺の熱を下に降ろす養生を行うことがポイントとなります。
おすすめは、気(き=エネルギー)や血(けつ≒血液)の通り道である経絡(けいらく)に沿ったアロママッサージ。マッサージオイルにおすすめのアロマは次の通りです。
◉ゼラニウム
過剰な心の熱を鎮めて、精神の高ぶりをやわらげます。女性ホルモンのゆらぎを整えるアロマで、ローズに似た香りが特徴です。
◉ローズウッド
気を補って疲労回復をサポートし、腎陰(じんいん=腎の水分)を補うことで心の熱を鎮めます。甘くウッディな香り。
◉サンダルウッド
ビャクダン科の常緑樹の心材(幹の中心部)から抽出される精油。植物のなかでも地に近い部位から抽出されていることから、上半身から降りてきた気を下に沈めて落ち着かせる性質があります。
これらのアロマで芳香浴をしたり、アロマバスにするのも◎。マッサージに使うなら、ぜひこの3種の精油を次の分量でブレンドしてマッサージオイルを作ってみてください。
◉マッサージオイルの材料と分量(マッサージ約2回分)
ホホバオイル⋯⋯10mL
ゼラニウム⋯⋯1滴
ローズウッド⋯⋯1~2滴
サンダルウッド⋯⋯1滴
※肌が敏感な人は、ローズウッドを1滴にしても十分です。
※精油は原液を肌に直接つけないでください。
以上の材料をブレンドすれば、マッサージオイルの完成。イメージとしては、体の上部にたまった心の熱をゼラニウムがやわらげて、サンダルウッドがその熱を下へと降ろしていき、ローズウッドはその上から下へと熱を送る橋渡し的な働きをする、というブレンド内容になっています。

