
せっかく遺言書を作成しても、時間の経過とともに実情が想定とかけ離れてしまうこともあります。具体的に見ていきましょう。『もめない遺産相続、失敗しない遺言』(ワニブックスPLUS新書)の著者、杉村政昭氏が相続について詳しく解説します。
Q1. 相続人のひとりが一定の不正な行為をした場合、その人はどうなりますか。
A. 民法上、相続財産に関して一定の不正な行為をした人は、相続人であっても相続権を失います。たとえば、相続人のひとりが遺言書を破棄した場合には、破棄した人は相続欠格者となり相続権を失い、相続人ではなくなります。
民法では遺言に関し、次の(1)から(3)のいずれかに該当する者は相続人の資格を剝奪されることになっています。とくに(3)は現実によく問題になります。
(1)詐欺または脅迫によって、被相続人の相続に関する遺言書の作成、取り消し変更を妨げた者
(2)詐欺または脅迫によって、被相続人の相続に関する遺言書の作成、取り消し、変更をさせた者
(3)相続に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者
Q2. 遺言書記載の受遺者が遺言者より先に死亡していた場合は、どうなりますか。
A. 受遺者(遺贈を受ける人)が遺言者より先に死亡している場合、この遺贈は無効となります。なお、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合も、遺贈は無効となります。
したがって、受遺者の取得分は本来の相続人に帰属することになり、法定相続人はこの分について遺産分割協議を行い、遺産の取得者を決めることになります。
