Q7. 法定相続分を変更することができますか。
A. 相続人の職業、家庭事情などによっては、法定相続分どおりに遺産を相続させたのでは不都合が生ずる場合があります。そこで、次の(1)、(2)の方法により、法定相続分を変更することができます。
(1)遺言で相続分を指定する 被相続人が遺言で相続分を指定すればそれが優先されます。ただし、遺留分を侵害する遺言書を書きますと、遺留分権利者に遺留分侵害額請求権が発生しますので、手続が複雑になります。それを避けるため、権利者の遺留分を侵害しない遺言書を作成したほうがいいと思います。
(2)遺産分割協議をする 共同相続人「全員」が協議して、異議を述べる者がいなければ、相続分に拘束されることなく任意に分割することができます。
※1 養子縁組……血縁関係のない者同士に法律上の親子関係を成立させる制度のこと。子供の福祉を目的とした特別養子縁組とそれ以外の一般的な普通養子縁組がある
Q8. 相続財産を受け継ぐ手続について教えてください。
A. 相続財産を受け継ぐ手続については次の(1)、(2)、(3)があります。
(1)単純承認
相続の開始があったことを知った日から三ヶ月を経過するまでに、限定承認や相続放棄をしないかぎり、相続人は共同で被相続人の財産上の権利義務をプラスの資産もマイナスの資産も無制限に引き継ぐものとされます。これを単純承認といいます。
(2)限定承認
限定承認とは、相続財産より債務のほうが多いか、または多いかもしれない場合に、相続によって得た財産の範囲内でのみ被相続人の債務を支払うこととして相続する方法です。
限定承認の手続は、相続開始を知った日から三ヶ月以内に家庭裁判所に財産目録を提出して、申し立てますが、相続人が数人いるときには、全員で共同して行う必要があります。
(3)相続放棄
相続放棄とは、債務のほうが多いときとか、財産はいらないというときに、相続人としてすべての権利、義務から免れる相続方法です。相続放棄はひとりでもできます。
相続放棄の手続は相続開始を知った日から三ヶ月以内に、家庭裁判所に申し立て、相続放棄申述受理証明書の交付を受けます。その結果、放棄者は初めから相続人でなかったものと見なされ、代襲相続もなくなります。
セミナー講師
杉村政昭
