◆「子どもたちの将来よりも、私を救ってくれた献金が大事」

母親は統一協会への巨額の献金を、自分の意思で行い、間違ってはいないと繰り返し強調した。
「お金より大事なのは命」、「学歴よりも、明るく生きること大事なことがある」統一協会への揺るぎない、エキセントリックといえる信仰の発露の連続だった。カルト宗教の怖さが鮮明になった。
閉廷後に記者団の取材に応じた弁護士は、「母親は被告を見ていたが、二人が視線を合わすことはなかった」と話した。閉廷後の被告の様子については「回答を控える」とした。
◆安倍昭恵氏の上申書がモニターに
話が前後するが、この日の公判(午後1時8分開廷)では、検察側が安倍元首相の妻、安倍昭恵氏の上申書(2023年8月4日付)をモニターに出し、主任検察官が全文を読み上げた。事件から1年後、今から2年3カ月前に記した文章だ。「事件当日の朝、いつも通りに夫を送り出した。午前11時半過ぎに、『撃たれた』と事務所から連絡を受けて、一人で新幹線に乗って奈良に向かった」
「あまりに衝撃的だった。世界中の友人から夫の無事を祈るメッセージが届いた」
「医者から説明を聞くうちにだめだと悟った。夫はおだやかで笑っているように見えた。手を握って、『しんちゃん、しんちゃん』と2回呼びかけた。体が温かくて、手を握り返したようで、待っていてくれたと感じた」
「今も悲しみを昇華できない。長生きしてもらいたかった。夫の親しかった人の顔を見ると夫を思い出す。一周忌法要で『なぜここにいないのか』と涙があふれ、止めることができなかった。ただ、生きていてほしかった。長生きしてほしかった」
また、安倍氏が母親の安倍洋子氏(岸信介元首相の長女)より先に死亡したことは無念だったことを強調した。

