◆被告人を非難する言葉は見られず

昭恵氏は被害者参加制度での遺族としての出廷はしなかった。代わりに、昭恵氏の代理人弁護士が参加している。
昭恵氏の上申書に、被告人を非難する言葉や刑罰に関する言及はなかった。昭恵氏は、難病などで不幸な境遇にある子どもたちの社会活動に関心を持っているようだ。
◆安倍氏狙撃を決意したビデオメッセージが再生
検察側立証が終わり、弁護側の立証に移り、小城達弁護士が山上さんと母親、妹とのメールを取り上げ、山上被告が持っていたSDカードに入っていた安倍首相(当時)の統一協会関連団体、天宙平和連合」(UPF)のイベント(2021年9月12日)へのビデオメッセージ動画を再生した。韓国のPEACE LINKの映像でハングルの字幕がついていた。安倍氏はメッセージの中で、「朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」などと演説していた。山上被告はこの動画をネットで目にし、安倍氏狙撃を決意したと見られている。
弁護側は、統一協会の献金問題に取り組む全国統一教会被害対策弁護団が安倍氏に送った抗議文をモニターに出して、一部を読み上げた。
その後、弁護側は被告と母親、兄妹らとのメールにやりとりを読み上げ、その後、母親が証言台に立ち、冒頭へと戻る。
母親の証言が終わって閉廷した後、観光客でにぎわう奈良は夜を迎えていた。裁判所の前で、京都から来たという市民は「ここで山上被告の裁判があったんですね。母子の対面、つらいですよね」と話した。
母親は18日(火)午後の第8回公判で引き続き証言する。関係者によると、今後、被告の妹も出廷する予定という。
<取材・文・写真/浅野健一>
【浅野健一】
1948年、香川県高松市生まれ。72年、共同通信社に入社。84年『犯罪報道の犯罪』(学陽書房)を発表。ジャカルタ支局長など歴任。94年に退社。94年から2014年まで同志社大学大学院メディア学専攻教授。人権と報道・連絡会代表世話人。『記者クラブ解体新書』(現代人文社)『安倍政権・言論弾圧の犯罪』(社会評論社)『生涯一記者 権力監視のジャーナリズム提言』(社会評論社)など著書多数。 Xアカウント:@hCHKK4SFYaKY1Su

