’11年の大ヒットドラマ『マルモのおきて』で一躍知られるようになった“国民的子役”も、今は21歳。“福くん”というイメージを背負いながらも、「みんなが思うようないい子ちゃんではない」と言う。子役を経て成長した俳優・鈴木福が、等身大の自分と向き合う現在地を語る。

◆いい子のままでは終われない
──今回の映画について福さんのSNSでの告知投稿を見て驚きましたよ。攻めた作品ですが、この仕事を受けようと思ったきっかけは何ですか。福:最初にオファーを受けたときのインパクトと、(※2)内藤瑛亮監督と佐藤(圭一朗、企画・プロデュース)さんたちと一緒にやれることも含めて、すごい熱量を持って僕にオファーしてくれているとマネジャーさんから聞いていたので、それならぜひということでお引き受けしました。

福:もちろん知っていて、好きでしたね。中学生ぐらいのときに観た(※3)『ミスミソウ』にすごく惹かれて、それがとても印象的でした。内藤監督の作品に呼ばれるとは思いもしなかったですし、タイプ的に違うのかなと思っていたんですけど、主演として携わらせてもらえることになって楽しかったです。
──ボクも勝手なイメージで、福さんは芸能界のど真ん中を行こうとする人だと思っていたので、人生に追い詰められて闇バイトに手を染めてしまうような役柄にも挑戦して、しかも見事に自分のものにしているという衝撃がありました。
福:なるほど。そのイメージはなんとなくわかります。俳優の仕事に関してはスケジュール的な問題がない限りは、ほとんどやりたい。まずやりたいという気持ちで企画を見るところから始まります。でも、挑戦的な役が来ないよなあ……というのは、やはりいくらでもありますよね。
──基本、(※4)『仮面ライダー』をやりたいというのはずっとおっしゃってましたけど、それ以外に何かあったりしたんですか?
福:そこがあまりにも大きすぎましたが、アクションをやりたいという気持ちもありました。
──今回もアクション的な部分はあるといえばありますよね。
福:だいぶ、緊張感のあるアクションですけども。
◆みんなが思うような“いい子ちゃん”ではない
──今回の役は過酷な状況にあっても、すごいポジティブじゃないですか。監督もプロットを書いている段階から顔が浮かんでいて、福さん自身の“陽性”的なトーンが作品に合っている、とキャスティングしたとコメントされていましたね。福:はい。僕も今日初めて聞いて、確かになと思いました。
──納得はするんですね。
福:します! え、しません?
──します、すごく。福さんも自分がどれだけポジティブなのかよく語っていますが、家庭環境で培われたんですか?
福:そこは大きいと思います。生まれ持ったものでいえば母親の影響が大きくて。あとからいろいろ考えた上でのポジティブさみたいなものは、父親からもらったものが大きいと思います。

福:まあ、“かわいいもので済んでいた”というのはあると思いますね。いろんなものに対してうがった見方をしていた時期もあるといえばあるんですけど。今思えば、そんなに気にすることじゃなかったよなと思います。
──お父さんが厳しかったのも大きいだろうし。ゲーム機をへし折った話も笑いました(笑)。
福:3DSが真ん中できれいに真っぷたつになったのを今でも覚えています。
──「これは反抗できないな」と確信して(笑)。そこからホントによくここまで真っすぐ育ってくれたと思うんですけど。
福:……真っすぐ育っているんですかね? よくそう言われますけど、そんなにみんなが思うようないい子ちゃんではないですよ、とは思います。僕、本当はずっと寝ていたい人間ですし。
──あとは(※5)野球をやりたいっていうぐらいの感じでしょうね。
福:寝ていて、たまにボールを投げて、友達と話して……、それで一生が進むのであればいいですね。
──それで食べられるのなら。
福:それでもいい。それくらいダラけた人間だけど、そう思えない自分がいるので。やはり、立ち向かうことが楽しかったり、そうしなきゃいけないという形ができてしまっている世の中だからこそというのを感じたりしています。
──苦しさの果てに楽しいことがあるのもわかっているし。
福:だから、そのまま進んでしまうんだろうなと思います。

