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マーケティングを研究中のアメリカ人、米国の大学で「“衰退する国”日本で学べ」と勧められたワケ

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日本人が誤解している「イノベーション」

「でも具体的に何すればいいのか、正直わからないわ」

日吉が尋ねると、マルクスが答えた。

「イノベーションを起こすんデス」

思わず日吉は仰のけ反ぞった。

「ムリムリ。ウチにはそんな技術も研究室もないし」

今度はマルクスが天を仰いた。

「オーマイガッ! 日本人がイノベーションを誤解しているというのは本当デスネ! イノベーションは技術とは無関係デス」

「そんなワケないわ。イノベーションの日本語は『技術革新』よ

それは有名な誤訳デス。1958年に経済白書で『イノベーション』を『技術革新』と翻訳したのがきっかけデス。当時の日本は技術立国を目指したのでそう訳したのかもしれマセン。でも間違いデス」

マルクスはホワイトボードに大きな円を二つ描いて説明を続けた。

「100年前に経済学者シュンペーターがイノベーションの概念を提唱しマシタ。イノベーションは『新結合』で生まれるんデス。既存知と既存知を、新しい方法で組み合わせて、新しい価値を生むことがイノベーションデス

マルクスは『新結合』と書いた部分を手で示しながら話を続ける。

「18世紀、ワットが蒸気機関を発明しマシタ。でも、蒸気機関だけでは社会は変わりませんデシタ。蒸気機関が鉄の車輪と鉄のレールと新結合して、蒸気機関車というイノベーションが生まれて、大量輸送が可能になって社会が変わりマシタ。iPhoneもそうデス。登場した時、多くの専門家が『iPhoneには新技術がないからたいしたことはない』と言いマシタ。確かに、タッチパネル付きiPod、携帯電話、インターネット用デバイスという三つの既存技術を新結合したiPhoneには、新技術はありマセン。でも、『身に付けて、アプリでどこでもすぐに数多くの便利なサービスを使える』という新しい価値を生んで、社会を変えたイノベーションになりマシタ」

[図表3]イノベーションとは「新結合」である

黙って話を聞いていた日吉が口を開いた。

「つまり、『お客が何で困っているか』というウォンツを考えて、それを解決するために、既存のモノで新しい組み合わせをつくればいいってこと?」

「イェース! その通りデス」

「でも、そんなに簡単にいくとは思えないんだけどなぁ」

イノベーションの実現に成功した「ウーバーイーツ」

その日の夜、日吉は自宅でジャージ姿になってくつろぎながら、スマホを見ていた。

「今日も頑張ったし、お腹も空いたわ。うん。お肉が食べたいなぁ。リブロースステーキ400グラム。これで決まりね。ライスとスープとサラダも付けよう」

そう言いながら、スマホでウーバーイーツを注文した。料理をしない主義の日吉はコロナ禍以後、自宅でウーバーイーツが基本である。

30分後、ステーキ、スープ、大盛ライス、サラダが届いた。すごいボリュームだが日吉にとってはいつもの量である。ステーキをモグモグ食べながら、日吉はふと気が付いた。

「あれ? ウーバーって、もともと自分のクルマで稼ぎたい人と、移動したい人を繫げる配車アプリよね。この仕組みを使って、料理を宅配したい店と配送員を繫げて、私もこうして自宅でステーキを食べられるわけか……。これって、ウーバーの配車の仕組みを、食事のデリバリー用に新結合しているってことよね……

晩酌のワイングラスをグイッと空けて、日吉はパンッと膝を叩いた。

「コロナ禍で在宅していて初めてウーバーイーツを使った時は『こんなサービスがほしかった!』って思ったけど、これがまさにウォンツを発掘して、既存技術を組み合わせて、イノベーションを実現するってことなのね。なるほど!」

[図表4]ウーバーにレストラン・食べたい人・配達員を新結合して生まれたウーバーイーツ

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