
9月、スウェーデンのフィンテック企業がニューヨーク証券取引所に上場しました。このようなフィンテック企業が提供するサービスの一つ、BNPL(Buy now, pay later=今すぐ購入、後払い)の利用がアメリカで近年、急速に広がっています。なぜこの支払い方法が全米で注目されているのでしょうか。またわかりにくいクレジットカードとの違いについてもまとめました。
アメリカで利用が拡大する「BNPL」

9月10日朝、ニューヨークの金融街ウォール・ストリートに突如可愛いピンク色の車両が列を成し、道行く人の注目を集めました。スウェーデン発のフィンテック企業、klarna(クラーナ)がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した日で、記念キャンペーンの一環として行われたものです。同社上場のニュースは日本でも報じられました。
・クラーナ米上場、時価総額は約173億ドル(約2.5兆円)(翌11日付の日本経済新聞)
近年、アメリカではklarnaに代表されるBNPL(Buy now, pay later=今すぐ購入、後払い)プラットフォーム/サービスの利用が拡大中です。Klarnaのユーザー数は全米で「2600万人超え」だとNBCニュース(9月14日付)が伝えています。
BNPLは「クレジットカードに代わる気軽な決済方法」であることから、若い世代を中心に幅広く利用されるようになってきました(一部のクレカ企業は会員向けにBNPLオプションも提供中)。
その普及スピードは目を見張るほどで、各紙がKlarnaの上場のタイミングで「BNPLの利用がこれまでにないほどの勢いで高まっている」と報じています。確かに在米の筆者が消費者目線で見てみても、ここ数年(特にコロナ禍以降)にECサイトで買い物をする際、BNPLといった「クレカ以外」の支払いの選択肢が一気に増えたと実感します。消費者の間にすっかり浸透するようになった理由として、使いやすさもあると思います。ECサイトによりますが、その多くは表示ロゴの配置からプロセスに至るまでのUI(操作画面)が若年層向けにシンプル&クリーン、わかりやすく表示されていることから、障壁なく気軽に利用できるのです。
その利用機会について「バケーション中の滞在ホテルから日々の食品の買い出し、ドアダッシュ(フードデリバリー)に至るまで幅広い」と、NBCニュースは伝えています。
米キャピタルワン傘下の節約ツール、Capital One Shopping(6月23日付)によると、ユーザーは主に小額の買い物でBNPLを利用し、平均ローン額は135ドル(約2万円)規模とのこと(23年時点)。利用者数はまだまだ拡大中で、現在は「9000万ユーザー超え」、2年後の27年には「全米だけで1億ユーザー超えになるだろう」との見立てです。
日本でも、以前からあるPaidy(ペイディ)など各種BNPLの導入は増えているようですが、既に普及しているアメリカでは成熟しつつあります。klarnaのほかにもAffirm(アファーム)や若年層に人気のSezzle(セズル)、CITI FLEX PAYなど、サービスの数は数え切れないほどです。
参考程度に、米メディアが独自に決めた「ベストBNPL」は以下のようなサービスです(共に25年10月付)。
・米Forbes:Affirm、PayPal、Afterpay、Upgrade、Klarna
・米CNBC:Klarna、Afterpay、PayPal Pay in 4、Affirm、Zip、Sezzle
クレカとの違いは?

クレジットカードやスマホアプリによるキャッシュレス決済サービスが浸透している現代において、BNPLが選ばれる理由は何でしょうか。クレカとは何が違うのでしょうか。米yahoo! finance(10月3日付)の記事を参考にすると、以下のことが言えるでしょう。
BNPLプランとクレジットカードのメリット&デメリット*
(*)一例で現時点の情報。歴史的に新しいサービスのため、将来的に変更の可能性あり
●BNPLのメリット
・承認手続き/審査がより簡単
・クレカを持たない(持てない)人でも比較的容易に利用できる
・購入時に全額を支払う必要がなく分割払いで支出を均等化できるなど、支払い方法の選択肢がより柔軟(例:一定期間中に4回払いで利息ゼロ)
など
●クレカのメリット
・より多くの店舗で利用可
・利用による特典あり
・クレジットヒストリー(クレヒス、信用履歴)=信用度の向上に役立つ
など
●BNPLのデメリット
・クレジットヒストリー(クレヒス、信用履歴)=信用度の向上に役立たない
・利用による特典なし
・クレカに比べ利用できる場が限られている
・支払いが滞ると延滞料が発生(プランによっては延滞料や利息を請求される場合も)
・過剰支出が比較的容易なことから負債残高の増加につながる可能性
など
●クレカのデメリット
・残高を全額支払わなければ高金利が課せられる
・延滞料やペナルティが追加される可能性がある
・信用スコアが低いと、あらゆる承認が難しくなる可能性
など
■クレジットヒストリー(クレヒス)の過去記事
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