衝動買いを招きやすい仕組み?

BNPLサービスは、消費者にとっては心理的な障壁を下げ、比較的高額な商品であっても「購入ボタンを押しやすい」仕組みと言えるかもしれません。またクレジットスコアが低い人や信用履歴が浅い人の購買心もつかみやすいと言えます。
店側にとっても、注文数や売り上げ額を押し上げたり、これまでリーチしづらかった新規顧客の獲得に繋げられたりする効果が期待できます。
ただし消費者にとっては、衝動買いを招きやすい仕組みであるというのは否定できません。先述の米yahoo! financeの記事は、BNPLプランの選択が大きなリスク要因となる可能性を警告しています。FRB(連邦準備制度理事会)のデータによると、BNPLを利用した人の58%(24年)が「購入資金がなかったため」と回答しています。さらに利用者の24%が「支払いが遅れた」と答えています。
また対象は高額商品だけではありません。冒頭に書いたようにBNPLサービスはフードデリバリーでも使えることから「ピザの宅配にまで借金をするなんて」といったような批判がソーシャルメディアで沸き起こったのも事実です。
BNPLにしろクレカにしろ、使い過ぎてしまうと負債残高の増加に繋がる可能性があります。そうでなくても日本以上に生活コストが高いアメリカでは、クレカ負債額が過去最高値を更新中です。国内のクレカ債務総額は年々増えていて、最新の情報では、1兆2100億ドル(25年8月)に上ったと報じられています。物価高騰と借入コストの高さにも関わらず、多くの消費者が支出し続けているのです。
■過去記事
消費大国アメリカ、一人当たりの負債額やローンはいくら位あるの?
最後にもう一点。金銭や将来への不安や悲観的な気持ちを解消するため、近年アメリカのZ世代やミレニアム世代の間ではDoom Spending(ドゥーム・スペンディング)が広がりつつあることが指摘されています。ドゥーム・スペンディングとはそのような気持ちを紛らわすため、“無意識”に旅行や高級ブランドなどの贅沢品に手を伸ばす(お金を使う)ことです。
1000人以上を対象に行われたある調査(23年11月)では、96%の人が現在の経済状況を懸念し、25%以上がストレス解消のためにドゥーム・スペンディングをしていることがわかりました。悪い支出習慣に結びつく行動の一例として、オンラインへの依存も指摘されています。例えばCNBCニュース(24年)は「若者が慢性的にオンラインに接続し『悪いニュース』を絶え間なく受け取ることでまるで世界の終末のような気分になることがある」とした専門家の声を紹介しています。
BNPLやクレカなど、決済手段が多様化し生活がますます便利で豊かになる一方で、正しい金融リテラシーを身につけ、計画的かつ秩序ある支出を心がけることが求められています。
※文中の表記はすべて現地時間
