『スラムダンク』の聖地に続き、平成の日本ドラマに憧れて津々浦々のロケ地を訪れる中国人が急増中!一体何が彼らの心を摑んでいるのか? それは、インバウンドの新たな潮流となり得るのか――。
◆平成の日本ドラマにハマり、ロケ地を訪れる中国人たち
![中国人が[トレンディドラマ]に熱狂するワケ](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2025/11/1763425196900_zf8ijcfkluc.jpg?maxwidth=800)
訪日中国人の消費行動が昨今、爆買いから“爆体験”へ変化。モノ消費からコト消費へとシフトしたことで、日本観光がこれまでとは違った盛り上がりを見せている。
なかでも、アツいのが「聖地巡礼」。もとは宗教用語だが、アニメや映画の舞台、いわゆる“ロケ地巡り”を指す言葉として定着し、中国でも「圣地巡礼」(シオンディシュンリー)として広まっている。
漫画『スラムダンク』の舞台とオープニングにも登場する“名物の踏切前”には、ここ数年、中国人観光客が途切れなく押し寄せ、常に人だかり。
映画『君の名は。』の舞台の一つ、静岡県伊東市・大室山でも、山頂の撮影スポットに中国人観光客の長い列ができ、シャッター音が絶えないなど、同様の現象が起きている。
そして、アニメの次は、1990年代トレンディドラマの舞台を訪ね歩く“ドラマ型聖地巡礼”が新たなブームとなっているのだ。なかでも圧倒的な人気を誇るのが『東京ラブストーリー』。
梅津寺駅。柵に結ばれたタオルには「莉香加油(リカ、がんばれ)」とある![中国人が[トレンディドラマ]に熱狂するワケ](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2025/11/1763425196900_wqv6ovpso8.jpg?maxwidth=800)
中国のSNS「小紅書」では、ロケ地・愛媛県大洲市を訪れた中国人による投稿が相次ぎ、「30年ずっと憧れていた東京ラブストーリーの写真再現ができた!」「リカとカンチ(※主人公の名前)が最後に別れた梅津寺駅を訪問しました」といった感激コメントが並んでいる。
◆失われた青春の光だった日本の自由恋愛
『東京ラブストーリー』聖地巡礼(編集部訳) かつての日本ドラマの、一体何が中国人の琴線に触れるのか。実際に話を聞くと、その背景には「失われた青春」への憧れがあるようだ。
SNSではロケ地訪問だけでなく場面の再現や写真を照らし合わせる投稿なども(『東京ラブストーリー』)
今、私は赤名リカです(編集部訳)「中国では中学・高校時代に恋愛をすると退学になることもある。だから青春時代の思い出といえば勉強だけ。社会人になってもお見合いを強いられ、自由恋愛の雰囲気が乏しい。でも中学生のときに露店で『東京ラブストーリー』のDVDを買って観てからは、私にとって理想の恋愛そのものでした。大人になった今でも、カンチが理想の男性です」(35歳・女性・福建省出身)
「日本のアニメとドラマが大好きで、中国の大学では日本語を専攻しました。特にキムタク主演の『ロングバケーション(悠长假期)』はセリフを覚えるほど観ました。抑制的でも熱さのある演技が、まさに日本の都市型男子という感じ」(30代・女性・重慶市出身)
中国カルチャーに詳しいライターの青山大樹氏は、この熱狂ぶりを分析する。
登場人物の着用アイテムがフリマサイトで人気![中国人が[トレンディドラマ]に熱狂するワケ](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2025/11/1763425196900_bjcls2wu0ss.jpg?maxwidth=800)
「1980年代に改革開放が進み、1990年代から本格的な経済成長が始まると、海外の文化が一気に流れ込んだ。1990年代後半には海賊版DVDの普及で、日本や台湾のドラマが家庭に広まりました。日本の若者たちの都会的で切ない恋愛模様は、保守的な社会で生きてきた中国人にとって衝撃であり、強い憧れを抱かせたのです」
当時、日本のドラマに夢中になっていた世代は今や30~40代。経済的に大きく成長した中国で、ある程度の自由に使えるお金を得た彼らが、憧れのドラマの世界をリアルに体験するために日本を訪れているというわけだ。
実際、中国では’13年に中国版『101回目のプロポーズ』が映画として公開され、観客動員数660万人を記録。’21年には上海を舞台にした『東京ラブストーリー』のリメイクが発表されるなど、平成ドラマの人気は衰えを見せない。