この熱は閣僚にも波及している。片山さつき財務大臣や小野田紀美経済安全保障担当大臣の国会答弁や記者会見も、象徴的なワンシーンが拡散され、「強気」「かっこいい」といったラベルが付けられていく。国会の“名場面”を切り取って楽しむ行為は、政治に関心の薄い層まで巻き込み、エンタメ文化の一部として定着しつつある。
こうした“高市現象”の背景にある社会心理と、その功罪と行く末をどう読み解くべきか。SNSの政治言説を長年ウォッチしてきた文筆家・古谷経衡氏に聞いた。

◆政策ではなく“空気”で支持されている
ーー高市首相が就任直後、非常に高い支持率を得ています。特に20代からの支持が大きいようですが、この背景には何があると考えられるでしょうか。古谷経衡氏(以下、古谷):若い世代はテレビや新聞ではなく、SNSで情報を浴びています。高市応援系の投稿をフォローしていなくても、タイムラインには自然と「高市さんを持ち上げる空気」が流れ込んでくる。政策を比較して判断しているわけではなく、「なんとなく良さそうだ」という雰囲気で支持が形成されているのだと思います。
そういう雰囲気、空気が、特に若い世代で高まっている。これは政策が響いたからとか、そういうことではありません。その証拠に自民党の支持率はあまり変わっていない(時事通信社の11月世論調査では21.8%)。
つまり高市政権に期待はしているのでしょうが、政策の評価というよりは、首相個人のイメージに対する“空気の支持”です。
◆「服がだらしないとか、そういうレベル」
ーー高市首相だけでなく、その脇を固める女性閣僚にも強い期待感が寄せられています。古谷:彼女たちがこれまで何を主張してきたかを吟味している人は、ほとんどいないでしょう。単純に「女性だから」「若いから」「初の女性総理だから」というパッケージで見られているだけです。
SNSで評価されるのも「毅然とした受け答え」「ペーパーを見ないで話す」といった印象面。石破さんもペーパーなしで話すタイプでしたが、「くたびれたおじさんに見える」というだけで評価されなかった。もちろん、政治家なので服装や喋り方も採点の対象になりますが、政治家が“どう見えるか”だけが判断基準になっている。
もし総裁選の結果、小泉進次郎さんが総理になっていたら、それはそれで同じように支持率は高かったと思います。

