
秋のお彼岸が近づいてきました。秋のお彼岸とは秋分の日(9月23日)をはさんだ前後3日間、計7日間のことで、「暑さ寒さも彼岸まで」といわれる通り、この時期を境に気候が大きく変わります。
そんな秋分前後の気候の変化は、心身のゆらぎを招いて更年期の不調を引き起こすことも。
ぜひ東洋医学の知恵で、季節の節目のゆらぎケアをしていきましょう。
なぜ秋分前後に“更年期のゆらぎ”が起こるの?

9月20日からは秋のお彼岸。二十四節気(にじゅうしせっき)の「秋分(9月23日〜10月7日)」もやってきます。
秋分の節気がはじまる秋分の日(9月23日)は、昼と夜の長さがほぼ同じになる日。そしてこの日を境に、夜が昼よりだんだん長くなってゆく、“秋の夜長”の季節へと移っていきます。季節の節目ですね。
東洋医学においても秋分は「陰陽(いんよう)」の節目とされています。
陰陽とは、森羅万象を「陰」と「陽」に大別する考え方のこと。「陰」は冷たく潤った性質、「陽」は熱くて乾燥した性質をさし、自然界に存在するさまざまな物質をはじめ、時間、方角、食材、人体など、あらゆるものを陰と陽に分類して養生や治療に応用しています。
そして季節にもやはり陰陽があって、昼が長い季節(春分〜秋分)は暑い陽の季節、夜が長い季節(秋分〜翌年の春分)は寒い陰の季節と考えられています。つまり秋分は、陽の季節から陰の季節へと切り替わる節目。これを「陰陽転換」とも呼んでいます。
この秋分の陰陽転換は、人体にもさまざまな影響をもたらすため、心身が不安定になりやすい傾向があります。特に更年期は心身のバランスがゆらぎやすい世代。だからこそ秋分の時期は、ゆらぎケアを意識して養生することをおすすめします。
のぼせ、イライラ、不眠などが現れるのは「陰の不足」タイプ

更年期の不調の原因は、大きく「陰の不足」と「陽の不足」に分けられます。どちらの場合も陰陽バランスがかたよっている状態なので、秋分前後にゆらぎやすく、不調が現れやすい傾向があります。
両タイプのうち、ほてりやすい、のどが渇きやすいなどの傾向が見られる場合は陰の不足タイプ。人体における陰とは水分のことで、陰の不足タイプは体内の水分が不足しているために余分な熱を冷やす力が低下しており、熱感や精神の興奮などが現れやすい状態です。特に秋分の時期は、次のような不調がよく見られます。
・ホットフラッシュ、のぼせ
体内の余分な熱が強くなりすぎて上半身に上昇し、頭部周辺が急激に熱くなっている状態。過労や夜ふかしなどで陰を消耗していたり、アルコールやカフェインのとり過ぎによって体内の余分な熱を増やしている場合も多いです。養生のポイントは、夜になったらリラックスして早めに就寝すること。夜は陰を補う時間帯なので、体に負担をかけないようにして早寝することが陰の不足を解消する助けとなります。また、食事からも陰を補うことが大切で、白きくらげ、くこの実などの薬膳食材は、陰を補いつつ上半身の熱を鎮めるのに役立ちます。くこの実はそのままおやつにしたりお茶に入れたりして、白きくらげは水で戻してスープやあえものの具にしたりして、日々の食生活にとり入れてみてください。
・憂うつ感、イライラ
陰が不足すると気(き=エネルギー)のめぐりがスムーズにいかなくなり、その影響で憂うつ感、イライラ、焦燥感などの精神的な不調が現れやすくなります。この場合は気のめぐりをよくする養生法が最適。心身が緊張状態にあると気が滞りやすいので、心身がリラックスしやすい夕暮れどきに軽く散歩をして、気のめぐりをよくするといいでしょう。おすすめの薬膳食材は陳皮(ちんぴ)パウダー。陳皮とはみかんの皮を乾燥させた食材で、パウダー状のものが市販されています。少量を白湯や紅茶に入れたり、味噌汁やスープにふりかけたり、塩と混ぜて陳皮塩を作り料理の味つけに使ったりするといいでしょう。陳皮は少量をこまめに使うのがポイントで、香りを感じることで気のめぐりが促進されます。
・不眠、不安感
陰の不足によって体内に生じた熱が、五臓の心(しん=心臓の働きや精神状態など)を熱してしまい、精神が興奮状態になって不眠や不安感などが生じている状態です。この場合は、精神を安定させるために就寝1時間前のルーティンを決めてみましょう。一例として、まず就寝1時間前になったら部屋の明かりを暗めに落としてスマホやPCをオフにし、就寝30分前に40℃程度のお湯で足湯につかり、心の興奮状態を落ち着かせます。就寝10分前になったらベッドに横になって深呼吸を数回行い、読書などで心を落ち着かせ、就寝時間になったら消灯。このようなルーティンを決めて毎晩繰り返すことで、体が睡眠リズムを覚えて精神が安定しやすくなります。おすすめの薬膳食材は、精神の安定を助けるなつめ。カフェインレスなので、就寝前になつめ茶を飲むのもいいでしょう。

