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カトラリーの整理から、始めてみよう。編集後記「料理好きの台所」

カトラリーの整理から、始めてみよう。編集後記「料理好きの台所」


本棚の引き出しにぴったりと収まった小堀紀代美さんのカトラリー類。無印良品のボックスが引き出しの奥行きにシンデレラフィットしたという。

引っ越しのたびに台所を自分仕様に整えてきたという料理家の小堀紀代美さん。築50年の家を改修した今回の住まいも、動線や収納、光の入り方までが、彼女の感覚にぴたりと寄り添っている。調味料の並べ方や器の置き場所ひとつにも、「料理する人」のリズムがあるのだと感じた。キッチンの中央に立つと、そこが暮らしの中心であり、彼女の仕事場でもあることが伝わってくる。

取材のあと、自分の台所の引き出しを開けて、ごちゃついたカトラリーを整理してみた。すると、使っていないフォークやスプーンが思ったより多く、しかもどれも少しずつ形が違う。結局、いつも手に取るのは決まった数本だけだった。ひとつひとつ手に取って眺めながら、「これ、いつ買ったんだっけ?」なんて考えているうちに、時間が経っていた。

実を言うと、私はあまり引っ越しが好きではなく、同じ場所にもう三十年近く暮らしている。だから、暮らしを動かしながら整えていく小堀さんの姿勢には、少し憧れに似た感情を抱いた。大きな模様替えをしなくても、ものの位置を変えたり、収納を見直したりするだけで、日々の景色は少しずつ変わる。とくに台所は、毎日の場所だから、小さな変化を重ねながら、使いこなしていきたい。今回は小さなカトラリーの引き出しだけだったけれど、今度は食器の位置を変えるのもいいな。そんなことをしみじみと思った取材でした。

(編集K)

 

COOKING LOVERS’ KITCHENS / 料理好きの台所。&Premium No. 145

かつて住まいの裏方であった台所は、いまや家づくりの軸となる、暮らしの中心にある存在になりつつあります。いい台所は、使い勝手のいい台所。使う人が自分自身の勝手にあわせて工夫をするのです。そして自分の勝手というのは、繰り返し料理をする中ではじめて見えてくるものですから、心地のよい台所の持ち主は、すなわち 料理好きであるといえるのではないでしょうか。今号の特集は「料理好きの台所」。手をかけ、使い込んだ台所からは、その人が楽しげに腕を振るう姿や、豊かな食卓や暮らしそのものが透けて見えるようです。すべてのものを取り出しやすくしている人、スッキリ何もない空間で料理に励む人、菜箸や布巾ひとつまでこだわって選ぶ人。工夫とアイデアに溢れ、すみずみにまで目の行き届いた、16組の料理好きのみなさんの台所を拝見します。

andpremium.jp/book/premium-no-145

配信元: & Premium.jp

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