近年、日本や中国、韓国を中心に若者の間で注目を集めているキャラクターがある。それが、中国の玩具メーカーPOP MARTが展開する「LABUBU(ラブブ)」だ。

香港出身のアーティスト、カシン・ルンが生み出したキャラクターで、森の妖精ファミリー「THE MONSTERS(ザ・モンスターズ)」の1キャラクターだった。長い耳とギザギザの歯を持つ、「ブサかわいい」デザインが人気となり、社会現象ともなった。
だが、ここへ来てラブブバブルが崩壊しつつある。一体何が起こっているのだろうか。
「映えるコンテンツ」としての流行
ラブブが最初に注目を集めたのは2019年ごろ。中国国内でPOP MARTが仕掛けたブラインドボックス戦略によって、「開けるまで何が出るかわからない」というガチャ的なランダム性が消費者を熱狂させた。
特にZ世代を中心に、開封動画や写真がSNSに投稿され、ラブブは「映えるコンテンツ」として消費され始めたのである。
その後、人気はアジア各国に波及し、日本でも2024年以降話題になっていった。ユニクロなど大手ブランドとのコラボレーションも行われ、ファッションアイテムとしての側面を獲得する。
さらにはブラックピンクのリサや、元サッカー選手のデービッド・ベッカムといったセレブが紹介したことなどもあり、一般層へと認知が広がっていった。
現在では、シークレットアイテムやコラボアイテムは発売と同時に売り切れることも珍しくなく、転売市場で高額取引されるケースも多発している。ラブブは単なるキャラクター商品ではなく、社会現象へと進化したのだ。
「ネタ消費」としてのラブブの魅力
なぜラブブがここまで支持されたのか。その背景には、従来のキャラクター消費とは異なるいくつかのポイントがある。
先に挙げたデザインの中毒性と、ブラインドボックス販売や限定コラボなどの射倖性。そしてそれらを包括するストーリー性である。
「映える」サイズとデザインは、SNS時代の「ネタ」にピッタリのものだった。
何が当たるかわからないガチャ的要素は、消費を「体験」へと変えた。外れ・当たりすらSNSで共有され、購入行為そのものがストーリーとなり、コンテンツ化したのだ。
言い換えれば、ラブブはSNSが普及した2010年代以降に広まった「ネタ消費」の潮流に位置づけられる存在だ。
ネタ消費とは、人々が「モノそのもの」よりも、「それをどう語れるか」「どう共有できるか」を重視して消費する行動を指す。
ラブブは「使うもの」ではなく「話題にするもの」、もっといえば「会話の燃料」へとシフトしているのだ。人々はラブブそのものを欲しているのではなく、「ラブブを持っている自分」という記号を欲している。
一方で、このネタ消費経済には宿命的な弱点もある。たとえばタピオカドリンクなどのように、語るべきネタが尽きれば、消費は急速に冷めることだ。