男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
— あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「餃子とビールが好き」と男に言う29歳女。“庶民派アピール”の裏にある計算とは
駿との2泊3日の福岡旅行を終え、羽田空港で一緒にタクシーを待っていると、彼が急にこんなことを言い始めた。
「由梨。一緒に住まない?」
「……え?」
一瞬、聞き間違えたと思った。それくらい、意外だったから。
「だって…このまま、どうせ僕の家に一緒に帰るでしょ?それだったら、一緒に住んだほうが早いんじゃないかなと思って」
交際して3年になる駿。
私が30歳になるタイミングでプロポーズでもしてくれるのかと思ったけれどそんな願いは虚しく、私は今年で33歳になる。
一方の駿も38歳と、いい年齢だ。
「それって…どういうこと?」
「もちろん、結婚を前提に」
飛び上がるほど嬉しかったのは、言うまでもない。でも頑なに同棲も結婚も拒んできた駿が、どうしてこのタイミングで急に気持ちが変わったのだろうか。
Q1:男が結婚するのを拒んでいた理由は?
駿と出会ったのは、友人の紹介だった。20代で起業した駿は若き経営者として成功していて、家は虎ノ門のタワマンで、車は高級車に乗っている。
毎晩会食という名の予約の取れないレストランを巡るほどの美食家で、相当遊んでいたと思う。
でも私が出会った当時は、真剣に彼女を探していたらしい。
「由梨ちゃんは、どういう人がタイプなの?」
「私は、大人っぽくて頼れる人が好きです。駿さんは?」
「僕は真面目な人かな。あと、派手に遊んでいるタイプよりも、落ち着いている人が好き」
一応、最初から“紹介”というテイだったので、お互いありか無しか、すぐに判断できた。そのおかげで何度か食事へ行ったあと、彼の家へ行き、そのまま付き合うことになった。
駿と交際が決まった時、正直に言うと私はホッとした。経済的な面も含めて“一生安泰“という未来が見えたからだ。
私自身、大手日系メーカーの経理部で働いている。別に人のお金に頼る必要はないけれど、安定は大事なこと。今後結婚して子どもを作るとなると、綺麗事ではなくある程度の経済力は必要となる。
ただ、交際してすぐに結婚の話になると思っていたのに、半年が経ち、1年が経っても駿の口から、“結婚”の話はまったく出てこなかった。
「駿は、結婚とか考えたことある?」
痺れを切らして、私から聞いたことがある。しかし駿の口からは、信じられない答えが返ってきた。
「俺、縛られるのが嫌で。たぶん結婚とかはないかな」
この時の私が、絶望という名の奥底にまで気持ちが落ち込んだのは言うまでも無い。
でも言われてみれば、こんなにも駿の家へ通っているのに、合鍵さえ持っていない。
「不便だから、鍵もらえると嬉しいんだけど…」
私が聞くと、駿は若干面倒くさそうに本音をぶつけてきた。
「家に勝手に入られるの、好きじゃないんだよね」
それを言われると、何も言えなくなる。
「そっか…わかった」
“惚れた方の負け”とはよく言ったもので、私は駿が好きだったから「結婚がなくても、鍵をくれなくても仕方ない」と、どこかで諦めた。
結局私が駿に合わせる感じで、ダラダラと交際が続いていた。
でもそのモヤモヤも、2年が過ぎる頃にはどうでも良くなってきた。付き合っていることが当たり前で、もはやケンカもしない。
会ってもすごく話すわけではなく、お互い一緒に家にいても、別々に好きなことをする。そんな関係が心地よく、すっかり落ち着いていた。
しかし去年の誕生日、私はどこか期待していた。
― さすがにそろそろプロポーズだよね?
しかしそんなこともなく、気がつけば交際3年になった。
― この関係、どうしようかな。
私だって、良い年齢だ。色々と考えなければいけない。別れて次の人を早く探すべきか、このまま駿を信じて時が来るのを待つべきか…。
駿から福岡旅行に誘われたのは、そんな、もやもやと悩んでいたタイミングだった。
Q2:旅行で、男が女に対して結婚を意識した理由は?
「由梨、来月福岡でも行く?行きたいレストランがあって」
「うん、行きたい!」
仲は良かったので、旅行はたまに行っていた。この時も、そこまで深く考えずに二つ返事で行くことになった。
しかしこの旅で、駿の中で何かが変わったらしい。
◆
福岡へ到着後、まずはホテルにチェックインをし、少しゆっくりしてから初日のディナーへと向かう。
駿は、福岡に出来たばかりの新店『L’AS FUKUOKA』を予約してくれていた。
「ここって、青山のお店と一緒?」
青山店の方にはもう何度も行っているけれど、福岡店はもちろん初めてだ。
「そうそう。新たに福岡にもオープンしたんだよね」
「駿って、本当にセンスが良いよね」
薬院駅からすぐの所にあるハイセンスなお店は、照明の感じや店内の雰囲気も良く、デートにもぴったりだ。地方の美味しくてオシャレなお店まで知っている駿を、改めて尊敬の眼差しで見つめる。
そしておまかせコースと一緒にペアリングもお願いし、福岡の夜に乾杯してから楽しいディナーが始まった。
「福岡でこれが食べられるなんて!」
サクサクのクリスピーに、しっとりとした濃厚なフォアグラが挟まれた『L'AS』名物の「フォアグラのクリスピーサンド」までちゃんとある。
華やかで美味しい食事と共に、進むペアリング。久しぶりに、駿の顔を正面からまっすぐ見つめられた気がする。
お互い向き合って座って、ゆっくりと食事を楽しむこと。私が求めていたのは、こういう時間だったのかもしれない。
「由梨、今日はご機嫌だね」
「うん、だって嬉しいんだもん」
「喜んでもらえて良かった」
赤ワインを飲みながら、すっかりご機嫌になった私。
「美味しかった〜♡駿、もう1軒行こうよ」
「そうだね、せっかくだし」
久しぶりに駿と楽しい時間を過ごせ、ケンカなどもせずに幸せな空気が二人の間を充満していたと思う。
2泊3日なんて光速のように過ぎていく。。
お互い隙間で仕事や友人とのメールに返信したり、オンラインミーティングに参加したり…各々自由に、適当にやりたいことをして過ごしていた。
そして2日目の夜。ご飯を食べながら、私たちはもう次の旅行計画を立てていた。
「由梨、次はどこか行きたい場所とかある?」
「え〜どこがいいかな。国内?海外」
「どちらでも」
「迷っちゃう!でもその前に、今回の福岡旅行、お母様へのお土産とか買った?」
「あ…やべ、忘れてた」
今年の夏、駿のお母様は入院していて、お見舞いに伺った。今回もお土産くらいは必要だろう。
「明日、空港で何か買うよ」
「うん、そうしよう。私からもお金、出させてね」
こうして2日目の夜もあっという間に過ぎて、帰宅の時間となる。
帰り道のこと。突然の駿からの同棲の提案に、私は嬉しい気持ちよりも驚きの気持ちが勝った。
― あんなにも結婚も同棲も嫌がっていたのに…なんで?
なぜ駿の気持ちは変わったのだろうか。
▶前回:「餃子とビールが好き」と男に言う29歳女。“庶民派アピール”の裏にある計算とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:11月2日 日曜更新予定
男が急に結婚を意識した理由は?

