いつまでも輝く女性に ranune
「月1回3時間」だけ外出許可…12歳から“塀の中”で暮らした少女がたどり着いた生き方「苦労には、すべて意味があります」

「月1回3時間」だけ外出許可…12歳から“塀の中”で暮らした少女がたどり着いた生き方「苦労には、すべて意味があります」

◆弟子入りから始まった“表現者”としてのキャリア

——塀の外に出て、初めてキャリアを意識したと思いますが、どのような仕事をしたのでしょうか?

川原:名古屋に住む兄夫婦の家に間借りし、近所のケーキ屋でアルバイトを始めました。その後は大手企業の契約社員など、さまざまな職を転々としましたが、22歳のとき「私は表現する仕事がしたいんだ」と改めて気づき、考え直したんです。そして京都にある柄専門のデザイン会社に入社し、着物の柄を描く仕事を始めました。とはいえ即戦力ではなく、最初の3年間は“無給の弟子入り”という厳しい条件でした。

川原マリアさん
弟子時代、会社で飼っていた雑種犬のタローと毎日散歩していたとのこと
——弟子入りしてからは、どのように物事が進んでいったのでしょうか?

川原:3年も無収入では生活できませんから、最初の1年で正社員になれるよう必死に頑張りました。不安もありましたが、努力が実って社員に昇格し、給料をもらいながら働けるようになりました。

当時の会社では、マネジメントできる人材が不足していたので、そのスキルを磨くうちに社内でも認められるようになりました。5年ほど経って、着物の卸問屋に転職。新規ブランドの立ち上げを任され、全工程を1人で切り盛りする毎日でした。しかし、その無理がたたってか、次第に鬱っぽくなっていきまして……。「このままだと死んじゃうかも」と思い、退職を決意したんです。

その後は就職ではなく、独立の道を選びました。幸運にも観光業関係の方から地方創生プロジェクトのアートディレクションを任され、それがきっかけで軌道に乗ることができまして。そうして一度は諦めた自分のブランドも、再び立ち上げることができたんです。

◆不自由な過去が導いた人生訓

川原マリアさん
——ほとんどの人が経験したことのない人生から得た教訓も多いと思います。最後に、人生に悩む読者に向けて、アドバイスをいただけますか?

川原:
悩んでいるときこそ、無理にでも気分を上げて“笑う”ことが大事だと思います。どんなに「もうダメだ」と思っても、笑えるうちはまだ大丈夫なんです。

私自身、子育て中に産後うつのようになったことがありましたが、そのときも「どうすれば笑えるか」を考え、周囲に助けを求めながら少しずつ立ち直りました。

もう1つは、「自分で自分を呪わない」こと。私は父の性格を引きずって「自分は幸せになれない」と思い込んでいた時期がありました。でも、それは関係のないことなんです。

家族や環境に縛られて、自分の可能性を閉じ込めてしまうのはもったいない。だからこそ、やりたいと思ったことはやってみてほしい。もしうまくいかなくても、必ず何かを学べます。苦労には、すべて意味がありますから。

取材・文/鈴木拓也

【川原マリア】

川原マリアさん
『不自由から学べること 思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』(ダイヤモンド社)
SNS総フォロワー数10万人超の、図案家・和柄デザイナー・アートディレクター。長崎県出身。京都市在住。伝統産業や地域創生に関するアートディレクターとして、ブランドディレクション、コンサルティング、イベントプロデュース等を斬新な切り口で手がける。美術館や行政イベントでの講師としても活躍。『不自由から学べること 思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』(ダイヤモンド社)は、初の著書。
X:@mariaria108_new

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki
配信元: 日刊SPA!

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