◆12万円ぼったくられ、絶望する
当たり前だが、セクシー女優は部屋に現れない。代わりに現れたのは、性病チェックをする係を名乗る年配女性だったという。「よくわからないまま、性器を出させられて、『はい大丈夫』って(笑)。帰りに『交通費として5000円ください』というので支払いました」
とうとう篠塚さんの待ち人は現れず、騙されたことを悟って警察に相談に行った。
「警察官からも『怪しいキャッチについていかないで、遊ぶならきちんとしたお店に行きなさい』なんて説教されてしまって。情けなくて、泣きながら電車で帰りました。被害総額はおよそ12万円、当時のほぼ全財産だったんです。忘れもしない2018年6月8日の出来事ですよ」
直後に友人との中国旅行を控えていた篠塚さんは、性風俗店を探していたことは伏せて母親に詐欺被害に遭ったことを伝えた。母親は深くは聞かずに10万円をくれたという。
◆男優をやめた理由は…
その後の篠塚さんの行動は、完全に振り切れている。セクシー男優になることで、性欲によって被った実害をまるで取り返すかのように活動した。男優になることを反対する母からは実家を追い出されたが、それでも貫いた。「セクシー男優は一般の人がイメージするような、女優さんとの絡みがあるものばかりではなく、いわゆる同性愛モノもあります。私は、恋愛対象は女性ですが、男性との絡みにも抵抗がないだろうなと思っていたので、やっていけました。2019年11月から1年間近く続けたのではないでしょうか」
一方で、やめた理由についても、非常に冷静な分析を行う。
「コロナ禍で仕事が減ったことは背景にありますが、それだけでなく、性に飢えた早稲田大学生がセクシー男優になるまでの過程が面白かったのだと気づきました。やはり第一線で活躍している男優さんたちとは、さまざまな技量において差があることは私でも理解できましたし、自分の天井はここまでかなと感じました」
まだ男優をしていた2020年7月、突如として病が篠塚さんを襲う。ぼんやりとした希死念慮が消えず、受診をした。診断はうつ病。このとき仕事も恋愛も好調だった篠塚さんには、思い当たることはほぼないと振り返る。
「本当にどうしてうつ病になったのか、驚きました。1つだけあるとすると、当時はSNSでレスバ(レスバトル)を頻繁にやっていました。ちょうど有名になり始めたころで、誹謗中傷の類が結構届いていたんです。私はスルーをせず、そのほとんどと闘っていました。友人たちは、心配してくれていましたね」

