「新卒1年で辞めた人」と呼ばれた看護師がホスピスの緩和ケアで信頼を勝ち取るまで

「新卒1年で辞めた人」と呼ばれた看護師がホスピスの緩和ケアで信頼を勝ち取るまで

ようやく辿り着いた、緩和ケアの現場

──療養型病院には7年間勤めたそうですが、なぜ転職されたんですか?

やはり、終末期の緩和ケアに携わりたいという思いがずっとありました。療養型病院での7年間は貴重な経験でしたが、慢性期中心の環境では、緩和ケア認定看護師になるために必要な終末期の実務経験を積むのが難しかったんです。

それに、タイミングの問題もありました。当時は子どもが3歳で保育園生活にも慣れてきた時期でした。小学校に上がると環境が大きく変わり、親も新しいことに挑戦する余裕がなくなると聞いていたので、転職するなら今しかないと感じていました。

そんな折、通勤圏内にホスピスが新設されることを知り、療養型病院の院長に「挑戦してみたい」と相談したんです。院長も「それなら」と背中を押してくださって。面接を受けたところ、施設内訪問看護として採用してもらえました。

──施設内訪問看護とはどんなサービスなのでしょうか?

有料老人ホームなどの施設内にある訪問看護ステーションから、それぞれの居室に訪問する形態です。

施設内訪問看護と訪問看護の違い

──緩和ケアといえば病棟のイメージがありますが、介護施設という選択肢もあるんですね。

緩和ケアができる場所は、大きく分けて緩和ケア病棟、施設や在宅への訪問看護、ホスピスの3つがあります。病棟の場合、病院の一部を緩和ケア病棟にしているケースが多く、必ずしも希望の部署に配属されるとは限らないため、選択肢から外していました。

訪問看護は、患者さんのご自宅に一人で訪問するので、病院勤務が1年しかない私には荷が重いと感じました。結果として、判断に迷ったときすぐに相談できる、ホスピスの施設内訪問看護を選びました。

──病院とホスピスでは、雰囲気も違うのでしょうか。

ホスピスは病院ではなく介護施設ですので、病気を治療するというよりも、生活を支える役割が大きいです。

利用者さんもご自宅のように過ごせます。私の職場では面会も自由ですし、食事の持ち込みやペットを連れての面会も可能です。病院では制限される乳幼児の面会もできるので、最期にお孫さんの顔を見られたというケースもありました。

──ペットの連れ込みまで! 緩和ケアは静かなイメージがありましたが少し印象が変わりました。

私の主観かもしれませんが、ホスピスは決して暗い場所ではありません。最後をどのように看取るかという施設ですので、壁に季節の飾り付けをしたり、利用者さん同士がコミュニケーションを取れる場があったりとにぎやかですよ。

2歩先、3歩先を想定したケア

吉島さんインタビュー1

──緩和ケア病棟と比べたとき、ホスピスで難しいと感じることはありますか。

病院と比べて迅速な対応が難しいですね。病院であれば薬剤を常備しているので、医師の指示があればすぐに処方できます。しかし施設では、薬を処方する場合、往診医、クリニック、調剤薬局と連携が必要です。極端な例ですが、病院なら5分で処方できる薬が、施設では丸1日かかることもあります。

ですから看護師は、利用者さんを日頃から注意深く観察して「そろそろ内服が難しくなりそうだから貼付薬を準備しておこう」「この状態なら明日には疼痛が増強するかもしれない」など、先回りして準備を進める必要があるんです。

──ホスピスでは病院とは異なる看護師スキルが求められるんですね。

そうですね。それに、利用者さんの疾患の幅が広いことも特徴です。緩和ケア病棟ではがん末期とAIDSの方がほとんどですが、ホスピスには診療科の区別がありません。消化器、循環器、神経内科など、さまざまな疾患の方がいるので、看護師にも幅広い知識が求められます。

──看取りもあると伺いましたが、ご自身のメンタルケアはどのようにされていますか。

患者さんに踏み込みすぎないことを意識しています。実は、急性期で初めて看取りをしたときに大泣きした経験があるんです。

その方は若い外国人の患者さんで、何度も入退院を繰り返していました。最初に出会ったときは日本語がほとんど話せませんでしたが、再入院のたびに少しずつ日本語を話せるようになり、亡くなる直前には「あなたが看てくれてよかった」と日本語で言ってくださって、大泣きしてしまいました。

その夜、このまま患者さんに深く入り込みすぎると自分が持たないと感じたんです。その経験からある程度心の境界線を引くようになり、それ以降は一度も泣いていません。

──意識的に距離を取るというのも、簡単なことではなさそうですね。

そうですね。看取ったあとに「もっと何かできなかったか」と振り返って勉強することも、私なりのメンタルケアにつながっていたと思います。後悔しないよう学んで、できる限りのことをして看取ることができれば、精神的な負担も少しは軽くなると思います。

あとは、休みの日にしっかり休んだり、友達と遊んだり、オンとオフの切り替えも大切ですね。

──振り返ってみて、1年で辞めたという選択は、ご自身のキャリアにどのような影響があったと思いますか?

看護師として10年以上働いていますが、「1年で辞めた」という事実は消えないので、ふとしたときに劣等感を感じることはあります。

でもその劣等感があったからこそ、ここまで努力できたんだと思います。認めてもらいたい一心で、必死に頑張ってきて、今はホスピスで重要な役割を任せてもらえるようになりました。1年で辞めたとしても、その後の選択次第で道は開けると身をもって感じています

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