いつまでも輝く女性に ranune

止まらぬかゆみ、見た目への偏見で暮らしに影響を及ぼす「アトピー性皮膚炎」

進む治療の選択肢、その一方で残る負担

――治療法に変化はありますか。

倉谷:近年新しい薬の開発が進み、これまで対処療法(※1)しかなかったものの、かゆみの原因に直接働きかけるような薬も出てきました。代表的なものがアトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因をブロックする効果のある注射薬「デュピルマブ(※2)」というものです。患者さんそれぞれの適応にもよりますが、劇的な改善が見られる薬剤です。

  • 1.「対処療法」とは、病気の原因を除くのではなく、あらわれた症状に応じてする治療法
  • 2.「デュピルマブ」は医薬品の一般名で、商品名は、「デュピクセント」という。生物が体内で作り出すタンパク質などを利用して作られる「生物学的製剤」と呼ばれる薬の一種で、従来のステロイド外用治療では改善しにくいアトピー性皮膚炎や重症の気管支喘息、慢性副鼻腔炎の治療に用いられている

――症状を抑えられるようになってきているということでしょうか。

倉谷:特にこれまで症状を抑えることが難しかった重症者への効果は大きいとされています。高額療養費制度(※1)が適用されますが、それでも「デュピクセント」は1本で1万円以上(※2)するため、治療に踏み切れずにいる人もいます。

また、こういった薬剤を使っても塗り薬は併用し続ける必要があります。

  • 1.「高額療養費制度」とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月の上限額を超えた場合に、超えた金額を支給する制度
  • 2.「デュピクセント」(1本300mgペン)の薬価は、自己負担3割の場合、初回2本で32,196円。その後は2週ごとに1本16,098円の注射を打つ必要がある。参考:サノフィの公式ホームページ「アトピー性皮膚炎の薬剤費」2025年11月20日時点

医療関係者や企業と力を合わせ、アトピー患者の快適な暮らしを支援

――日本アトピー協会ではどんな活動をされていますか。

倉谷:電話やメールでアトピー患者の方からの相談に応じているほか、市民公開講座や患者交流イベントの開催、通信紙「あとぴいなう」の発行などを通して情報発信をしています。

アトピー患者の皆さんの日常生活における負担を少しでも軽減できるように、医療関係者や企業と協力しながら、快適な暮らしの支援を行うことを目指しています。また、患者の方からおすすめの商品を聞かれることもあり、協会の推薦品の認証とマークの発行をしています。

――電話やメールではどんな相談が寄せられるのでしょうか。

倉谷:症状に対する治療について相談されることが多いですね。私たちは医療従事者ではないので、具体的な治療法をお答えすることはできませんが、ご要望があれば専門医がいる医療機関を紹介しています。

皆さん、苦しい思いを抱えて相談をしてこられるので、ときには電話で1時間以上お話しすることもあります。診察の際には医師に遠慮して話せないこともあるようで、「話を聞いてもらえる場所があるだけでうれしい」と言っていただけたこともありますね。

日本アトピー協会が発行する会報誌「あとぴいなう」の紙面の一部の画像。
日本アトピー協会の隔月通信紙「あとぴいなう」。公式サイトでも閲覧可能。画像提供:特定非営利活動法人日本アトピー協会

あなたにおすすめ