
突然の解雇という憂き目をきっかけに、将来を見つめ直すことになったという、在米23年目のファッション/テクニカルデザイナー・あっち氏。「収入源を複数化する」という目標を掲げ、数々の副業に挑戦した末辿り着いたのが……? 本記事では、あっち氏の著書『ニューヨークとファッションの世界で学んだ 「ありのままを好きになる」自信の磨き方』(KADOKAWA)より一部抜粋・再編集し、アメリカでの暮らしを支えている投資術をご紹介します。
「自助の国アメリカ」で不労所得を生む投資術とは
私は突然解雇された経験があります。それをきっかけに、収入源を自分でコントロールすることの大切さに気づきました。自分の人生を他人にコントロールされないため、そして夢のノマドライフを送るためにも「経済的な基盤」が必要だと痛感したのです。
アメリカでは、自分の老後は自分で設計するのが一般的です。公的年金はありますが、日本のような「みんなで支える」仕組みではありません。だからこそ、株や不動産などで資産形成をすることが求められます。まさに「自助の国」といったところでしょうか。
私自身、さまざまな副業を経て目を向けたのが、不動産投資でした。私がアメリカで不動産投資を始めたのは、2015年のこと。最初に購入したのは、ニューヨーク・ブルックリン、プロスペクトパーク近くの物件。築100年ほどの広めのワンベッドルームのコープアパートでした。
コープアパートとは、建物を持っている管理組合の株式を買って、共同で運営していくタイプの物件です。通常の分譲マンションよりも規制は厳しく、オーナーが最低数年間住んでからでないと貸し出せないなどの制約もありますが、入居者の審査があるため、周囲の環境が保たれやすいという安心感があります。
購入価格は当時で36万ドル(約5220万円)。キッチンをモダンにリノベーションしたため追加で3万ドル(約450万円)かかりましたが、現在の評価額は50万ドル弱(約7250万円)まで上昇しています。支出は毎月のローンの支払いと管理費を合わせて1617ドル(約24万円)。
さらに修繕費や空室率を考慮して10%相当の260ドル(約4万円)を毎月積み立てています。対して賃貸収入は2600ドル(約38万円)、差し引きすると723ドル(約10万5千円)のプラスになります。つまり、この物件は毎月10万円強の収益を生んでいる計算です。
さらに2021年には、コロナ禍をきっかけに2軒目を購入しました。こちらは石造りの3階立ての「タウンハウス」で、購入価格は105万ドル(約1億5225万円)ほど。築115年のかなり古い物件なので、モダンな雰囲気にアップデートするために、内装・外装を含めて約4800万円をかけてリノベーションを行いました。
とはいえ、すべてを業者に任せたわけではありません。予算を抑えられる部分は工夫し、使える素材は再利用。自分でペンキを塗ったり、トリム(内装の装飾部材)を付け直したりと、できることは自分の手で仕上げていきました。
現在は200万ドル弱(約2億9000万円)まで評価額が上昇しています。現在のローン返済や光熱費などの支出は、月に約5200ドル(約75万円)。一方で、賃貸収入は最近の民泊規制の影響でやや下がっていますが、過去2年間の平均では月8000ドル(約115万円)ほど。
つまり単純計算で、毎月2800ドル(約40万円)の黒字です。しかも私は、この家にある3つの部屋のうちの一部屋に住んでいるため、「家賃ゼロ」で暮らしながらこの収入を得ていることになります。
米国での不動産投資が魅力的なワケ
私がアメリカでの不動産投資が魅力的だと感じる理由はいくつかあります。まず、株などと比べて価格に安定感があるため、安いタイミングで物件を購入しやすいという点です。そして、物件を貸し出すことで毎月の家賃収入が得られる「現金を生み出す資産」であることも、大きなメリットです。
さらに、不動産は「担保」としても活用できます。たとえば、学費やリフォーム、事業の立ち上げなどでお金が必要になった場合、住宅を担保にして利用できるローンがあります。日本でも住宅ローン減税の制度がありますが、アメリカでも不動産を所有していることで、さまざまな税制上の優遇や控除が受けられます。
ただし、リターンがあるということは、それに見合うリスクもあります。2007年にはサブプライムローン問題によって、多くの住宅が差し押さえられ、価格が急落したのもその一例です。
また、ニューヨーク州ではテナント(借り主)の権利が強く、家賃を滞納されても退去してもらうまでに、裁判を経て1年ほどかかることは珍しくありません。さらに、税制の変更によって固定資産税が突然上がるリスクも否めません。
これまで家賃は年3%程度の上昇が見込まれていましたが、2025年11月の市長選挙では「家賃据え置き」を公約に掲げる有力候補がいるため、不透明感が広がっています。加えて、インフレにより修繕費や人件費も年々上昇し、予期せぬ出費が発生することもあります。
不動産投資に求められるのは、リスクを見越して計算し、柔軟に行動する姿勢です。具体的には、「必ず物件を自分の目で確認する」「相場より安く買う」「エリア選定に妥協しない」「余裕を持った資金計画を立てる」「時代の流れを読む」といったポイントを押さえること。また、良い物件と出会えたときには即決する判断力とスピード感も重要です。これらを徹底することで、失敗のリスクはかなり小さくなります。
不動産投資を始めて、将来や老後への漠然とした不安がなくなりました。本業を持ちながら、さらに別の収入源を持ちたいと考えたとき、限られた時間の中ですべての副業をこなすのは困難です。また副業のために、家族や恋人との大切なプライベートを犠牲にしてしまうのは本末転倒ですよね。
お金はあとで稼げますが、過ぎ去った時間は戻ってきません。その点、不動産投資は、自分が働き続けなくても収入を得られる最強の投資術です。
あっち
ファッションデザイナー、テクニカルデザイナー
