4.趣味と夢に現実逃避パターン…願望を叶えたあとの虚無感
定年したら再雇用とかパート勤務とか、いろいろなお誘いがあるはずだけど、それら全部お断りして、したかったことをしたいのだと、かつて少年少女時代からの憧れ、ずっとあたためていた趣味や夢にチャレンジする人もいます。
個人的には私もこのパターンに近いです。ただし少年少女時代だからこその価値、一人前になるまで時間がかかる趣味や夢だと残念ながらタイムリミットになるものもあります。
たとえば楽器。夢だったバイオリンを弾きたい、オーケストラで弾きたいと、超高額な楽器を買ってしまう中高年が近年増えているようです。ところが、難しい。肩や腕が思うように動かず、まさに修行。とくにバイオリンは体を痛める楽器で有名で、「拷問楽器だ」と知人の楽器屋さんが苦笑していました。
軽自動車で友だちを尋ねる日本一周の旅に出る、という夢がある人もいます。意外と多くいるのに驚くのですが、それほど日にちもかからず、なんだかあっという間におわってしまい、日本は狭かった、自分の人間関係も狭かったんだと、花火のあとの虚しさを味わい、さて働こうとする気持ちの切り替えが難しい、という人もいます。
したい趣味があるなら、その瞬間にするべき。瞬発力が必要です。夢を叶えるのも思ったときにやるから輝けるもの。
いつか叶えたいと大事に保管しすぎて、やがていざ定年したちょっとセピア色をした中古の自分がやるには、その夢はキラキラしすぎて手に負えないのかもしれません。夢を叶えるタイミングを失ったら、そのまま夢のままでいいんじゃないでしょうか。
5.移住の妄想パターン…なぜかまだ多い「田舎」への期待
日々人にまみれていると、たまに地方へ足を延ばすと、その空気のおいしさに感激します。深呼吸なんて久しぶり、電波が届かない幸せ、人間より動物の気配、なんともいえない魅力的な環境。いつしかこんなところで、数字や成果より土に根をおろし、風とともに生きよう。種とともに冬を越え、鳥とともに春を歌う暮らしにと思う気持ち、わかります。
しかし、そんな田舎に出会えるかどうかは別の話。中山間地域では思った以上に人口減少が過酷で、最後のひとりを誰が担うのかといった椅子取りゲーム状態です。
田舎暮らしに憧れるのはたいてい男性のほうで、現実的な思考の女性は老後を考えると都市部がいい、という判断。賢明です。これが理由で熟年離婚をする例が少なくないとか。まして田舎では希望する仕事がそれほどありません。結局都市部に戻ってくる話もよく聞くのですよね。
移住も、よく調べてから。働ける地方都市を探して移住、または二拠点生活が理想かもしれません。実は住むだけで健康になる街もあれば、ここで要介護になるとおしまいという街もあるのです。定年後世代とは福祉と切っては切れない年代。現実的な田舎の味わい、難しさを知っておくのは必要です。
つまり、いまの中高年世代が知っている定年後生活のイメージとは、ちょっと違うのが現実です。サザエさんやちびまる子ちゃんに慣れてきた世代にとって、定年ワードは「余暇」や「悠々自適」という言葉がまだ息づいているのでしょうね。
◆ここまでのまとめ◆
●定年のブランクは、できるだけ短くするに越したことがない
●定年後生活をゆっくりのんびりしている暇はない
※引用
厚生労働省監修広報誌『厚生労働』2021年11月号https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202111_00001.html
丸山 法子
株式会社Rensa 取締役/福祉事業部 リエゾン地域福祉研究所 代表
※本記事は『定年を意識したら読む本 定年のトリセツ』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
