来店するお客は“ビール通”の紳士がほとんどとはいえ、アルコールの影響もあってか“ウンザリするような客”に遭遇することも。都内のビアホールで働く筆者が、実際に目の当たりにした迷惑行為を紹介していく。

◆血を拭いたあとの紙ナプキンがテーブルに
ビアホールでの接客中、憂鬱な気持ちになるのは食べ終え退店したお客のテーブルを目にした瞬間だ。飲食業界で「六つ折り(むつおり)」と呼ばれている紙ナプキンが散乱し、持ち込まれたペットボトルやお菓子のゴミが残されたままという場面は1日に何度も目にする。
筆者は生理的に外食時に口を拭った紙ナプキンを他人に見られるのは嫌なのだが、その反対にいくらでも見られていいという人種も存在するようで、血を拭いたあとの紙ナプキンがテーブルに残されていたこともある。
また、食べた枝豆のさやをテーブルの上に直接置きっぱなしという信じられない行為を目にしたものも一度や二度ではない。
こうした食べ残しや紙ナプキンのゴミならまだしも、テーブルに残されたもので扱いに困るのがお客が無断で持ち込んだペットボトルなどの処理である。
先日も、飲み放題を利用した団体客の一人がビールを飲む傍ら、持ち込んだ1.5リットル入りのミネラルウォーターを公然とラッパ飲みしていたが、宴会後テーブルには空のペットボトルが当たり前のように残されていた。
一応、お客の私物なので退店時に「お忘れ物です」と差し出しても、返ってくるのは決まって
「ゴミだから捨てといて」
という一言。
ゴミなのは分かっていたが、店はゴミ捨て場ではない。
とはいえ、底から1センチ程残っているミネラルウォーターのボトルを「ここに水の忘れ物なかった?」と取りに戻るお客もいるので一概に捨ててしまうわけにもいかないのである。
◆ビールジョッキをゴミ入れ扱い
このようなゴミマナーで最も憤懣やるかたない気持ちになるのは、ビールジョッキやグラスがぞんざいに扱われたときである。筆者が働いているビアホールでは最上の一杯を提供するため、ジョッキやグラスは洗浄後、氷水に一定時間浸けてから使用している。
その後もできるだけ人肌の温みを与えないように持ち、ジョッキの取っ手をお客の右手の位置にくるように提供する。
そんなビアホールのプライドとも言えるジョッキやグラスに使用済みの紙ナプキンを突っ込んで返されたときは、自分の仕事が否定されたような気持ちになる。
先ほどの枝豆の殻をテーブルに直置きと同様、アルコールが入った上での何気ない粗相だとは理解しているが、お客が帰ったあとのテーブルからはその人の性根が見えてくるようだ。

