◆注文ミスで逆切れ、テーブルに残された料理
飲食店で最も多くマナー違反やトラブルの元となるのはやはり注文時だろう。筆者が働いている店では数年前から注文はタブレットによるテーブルトップオーダーを採用している。
お客自ら入力した注文履歴が残るだけに、以前の口頭でのやり取りに比べて認識の相違によるオーダーミスはかなり減ったが、それでもお客側の入力ミスによるトラブルは少なくない。
「二人で来て、パスタとグラタン2皿頼むわけないだろ!」
ランチ営業時、同僚のホールスタッフが料理を提供した中年夫婦らしき2人客の男性側に詰められている。
どうやら注文時に「グラタン×1」を「×2」と入力ミスし、注文通りにパスタ1皿とグラタン2皿が来てしまったことに怒っているようだ。
お客側はグラタン1皿のキャンセルを望んでいるようだが、注文通りの料理を適切な時間内に提供した以上、店側としてはキャンセルを受けることはできない。
このようなお客側の入力ミスは少なからずあるため、来店数と注文個数に違和感を持った場合はできるだけ提供前に確認を取るようにしている。
ビールを注ぐ前、料理の調理前なら入力ミスによるキャンセルは受け付けるといった対応だ。
しかし、ランチタイムや宴会が立て込んでいる繁忙時は目が届かない場合もあり、今回がまさにそれだった。
結局、その2人客にはその日の店舗責任者が対応。食べきれないのであればテイクアウトも勧めたもののそれも拒否され、規定の料金を支払ってもらったようだが……。
退店後、テーブルに残されていたのは、箸の刺さった手つかずのグラタン。
ビアホールで働き始めて以来、これほど心が寒くなった食べ残しは見たことがない。
◆無残に汚されていくグラウンドメニュー
また、メニューそのものへのマナー違反も後を絶たない。テーブルいっぱいにメニューを広げたままにし、その上にビールジョッキや料理の皿を置いて会食するお客だ。
特に飲食店のグラウンドメニューというのはその店の看板のようなもの。
ビールジョッキの水滴や料理の食べ散らかしで汚れていく様は見ていて気分のいいものではない。
この手のお客はもはや習慣化されているのだろう、メニューが紙だろうがタブレットだろうがお構いなしだ。
タブレットをコースター代わりにビールジョッキを載せている姿はまるで異邦人を見ているようだった。
<文/ボニー・アイドル>
【ボニー・アイドル】
ライター。体験・潜入ルポ、B級グルメ、芸能・アイドル評などを中心に手掛ける。X(旧Twitter):@bonnieidol

