そんな状況で注目されているのが「ジョブ・クラフティング」。これは自分自身の価値観や強みと仕事を結びつけ、仕事に新たな意味を見いだしながら、自分らしいキャリアを創り出す方法です。
固定化された職場を越え、異なる環境で自分の仕事の価値を再発見すれば、やる気や誇りを取り戻すきっかけが得られるかもしれません。
仕事観を変え、主体的なキャリアを築くためのヒントを400以上の企業や自治体の働き方改革などを支援し、ワークスタイルや組織開発を専門とする沢渡あまね氏に事例とともに教えていただきます。
※本記事は、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社刊)より一部抜粋・再構成してお届けします。

◆人間関係を変える「ジョブ・クラフティング」とは
成果が見えない、約束されない――。答えのない時代の到来は、働き手はもちろん、舵取りを行う経営陣にとっても難しい状況です。何が正解かわからない中で、環境は目まぐるしく変化し、新規事業への投資スピードを速めなくてはならない。特にかつての勝ちパターンが通用しなくなった業界、企業ほど、皮肉にもイノベーションの土壌となる寛容さが失われ、挑戦や失敗ができない、息苦しい職場になっていきがちです。
失敗できないからと職場のエースにプロジェクトが集中し、一方で、それ以外の働き手のキャリアアップや成長の機会はどんどん失われていく。次第にやる気やモチベーションは失われ、重苦しい職場で、目の前の仕事はただの退屈な作業に感じられてしまう……。
こうした背景もあり、年齢にかかわらず、仕事にやりがいを感じられず、停滞感を覚える人々が増えているように思います。
◆レンガ職人の教えに学ぶ! 「ジョブ・クラフティング」で仕事に新たな意味を

この考え方を理解するためによく引き合いに出されるのが、イソップ寓話『3人のレンガ職人』のエピソードです。
簡単にまとめると、次のようなものです。
旅人がヨーロッパのとある街を歩いていると、汗水垂らしながらレンガを運んでいる3人の職人に出会った。
それぞれの職人に「何をしているのですか?」と尋ねると、1人目は「親方の指示でレンガを積んでいる(やらされている)」、2人目は「レンガを積んで、壁を作っているんだ(キャリアを積んでいる)」、そして3人目は「お祈りするための大聖堂を造っている(意味を見いだしている)」と答えた。
3人とも、やっている仕事の内容は同じです。しかし、仕事への動機づけや意味づけがまったく違うことがよくわかります。
ジョブ・クラフティングとは、仕事の捉え方を1人目の職人から2人目、3人目へとシフトさせながら、自分なりの意義を見いだしていくことです。

