先祖代々の土地を本家に継がせたい…
先祖代々の土地を所有しているご夫妻には、子どもがいませんでした。このような場合、夫が先に亡くなって妻が全財産を相続すると、妻が遺言を残さない限り、夫の本家筋で引き継いでいくことが困難になってしまいます。妻亡きあとは、夫の甥に引き継いでもらいたいというケースで、何かできることはないでしょうか。
受益者連続型信託とは
遺言では、自分が所有している財産を特定の人に引き継がせることはできますが、自分の財産を引き継いだ人の財産の承継先までは、指定することができません。しかし、家族信託では、2代先の承継者を指定することができ、「受益者連続型信託」と呼ばれます。
このケースの夫は、代々の地主で、家族で経営する資産管理会社をお持ちでした。代々の不動産を2世代先まで承継することを考えると、信託契約の期間も長期間になることが想定されます。
また、仮に信託財産の受託者を甥にした場合、妻が亡くなった後、甥が受益者の地位を相続しますが、受託者と受益者が1年以上同じ人のまま続くと、信託契約が終了してしまいます。このため、個人が受託者となった場合のご自身の相続や認知症リスクを考慮して、法人を受託者とすることとしました。
現状で設立してある資産管理会社を活用するか、新しく一般社団法人を設立して受託者とするか、どちらも対応可能です。ただ、資産管理会社の場合は、株式の相続という局面が発生するため、相続とは無縁の一般社団法人を受託者とする選択肢もあります。
信託の内容
[図表5]受益者の家族関係図
○信託の目的:先祖代々引き継いできた土地の管理・運用と後継者への円滑な承継
○委託者:夫
○信託財産:先祖代々の土地○受託者:資産管理会社(または新しく設立した一般社団法人)
○受益者
最初の受益者 夫
二番目の受益者 妻
三番目の受益者 甥
信託契約には期間制限に注意
信託契約では、信託契約を締結したときから30年を経過したときの受益者に相続が発生した場合、その次の受益者に相続が発生したときに信託は終了します。
[図表6]受益者連続型信託の期間制限
遺留分に注意
二番目の受益者に相続が発生し、三番目の受益者に受益権が移転する際、妻に相続人(第三順位の兄弟姉妹)以外の相続人がいるときは、遺留分の侵害額請求を三番目の受益者である甥が受ける可能性があります。
[図表7]紹介例のケースにおける委託者・受託者・受益者の関係図
奥田 周年
行政書士
OAG税理士法人 社員税理士
