唯一無二で美しいものを作るために
ー ブランドを始めたきっかけは?
以前は300人以上の社員がいる大企業でクリエイティブディレクターをしていました。大きなデザインチームを率い、多くのジュエリーを大量生産していたのですが、あるとき「これは自分のやりたいことではない」と気がついたんです。もっと特別で、唯一無二の美しいものを作りたいと思いました。

そして私が情熱をささげる二つのもの、つまり「アンティーク」と「ジュエリー」を組み合わせて、約60点のユニークピースを制作したのがブランドの始まりです。それからイタリア中を旅し、作品を紹介しました。それぞれの作品に物語や想いが込められていたため、販売よりも「お客様と直接対話すること」を大切にして、最初の5年間はプライベートイベントのみで販売していました。その後、少しずつセレクトショップでも販売するようになり現在はこのように、お客様と直接対話できる機会を持てる形で活動しています。
ー 今回のイベントの目玉である「Being Furry」はどのように生まれたのでしょうか?
私自身がペットをとても愛していることから、このシリーズが生まれました。そしてもう一つ、ヴィンテージのクリスタルが好きだったこともあり、クリスタルにペイントを施すというこの特別な技法で生まれたジュエリーを身につけてくれる人を見つけたいという思いがありました。お客様にとってもエモーショナルな価値のあるものを作るということが、私にとってとても大切なのです。
技法の面でもすべての作品が唯一無二で、とてもセンチメンタルな意味を持っています。ただ「ブルーとグリーンがいい」というような単純なやりとりではなく、「どんなデザインが良いと思いますか?」「この2つのスケッチを見て、どちらが好きですか?」といった創造的な会話を通して、一緒に理想のジュエリーを見つけていきます。こうしてお客様と親密な関係を築き、一緒にデザインする時間がとても好きです。
ー コレクションには様々な動物やモチーフが登場しますが、インスピレーション源はどこから得ていますか?
身近なことや空想の世界など様々です。例えば初期に制作した「Wrestler(レスラー)」というコレクションは、息子がレスラー好きだったことがきっかけで、彼との共同制作のような形で生まれました。最初は少し奇抜なアイデアだと思ったし、個人的にはあまりピンとこなかったのですが、調べていくうちにレスラーの衣装が素敵に見えてきて。結果的にとても人気のあるコレクションになりました。新作ではレスラーのマスクに加えて、彼らの個性を象徴するパンツもデザインに入れ込んだ「Luchadores(ルチャドーレス)」というコレクションが登場しています。

「Close Encounters(クロース・エンカウンターズ)」コレクションは、私自身が描いた物語から生まれました。動物たちが異なる世界の中で出会い、友情を育むというストーリーがテーマです。たとえば、「友達が欲しい」と願ったレオパードが小さなテントウムシと出会い一緒に買い物に出かけたり、ライオンとタツノオトシゴが海辺のパーティーに行ったり...そんなファンタジーの世界をジュエリーに落とし込みました。


ー 素材には一点もののアンティークパーツなどを使用していますが、どのように集めているのでしょうか?
作品づくりのために世界中を旅してパーツを探しています。最初の頃はアンティークコレクターという存在を知らずアンティークマーケットで探していましたが、後に「各ジャンルごとに専門のコレクターがいる」ということを知り驚きました。もちろん、彼らは本当に自分のコレクションを愛しているので、そう簡単には売ってくれません。

中でも特に印象的だったのが、ニューヨークで出会ったコレクターです。カジノなどで使われるチップを集めていた彼を口説き落とすことは至難の業でしたが、コミュニケーションを重ねてようやく少しだけ購入することができました。条件は「作品に穴を開けないこと」!穴を開けずにセッティングするのは大変でしたが、独自の技術によってジュエリーにすることがかないました。コレクターたちからモノの見方や扱い方など、多くのことを学びました。
ー 次の作品の構想はすでにありますか?
来年の夏に発表予定の新コレクションを製作中です。詳細はまだ言えませんが、テーマは「旅」と「時間」。時が過ぎていく中で生まれる小さな発見や、思い出のかけらをモチーフにしたものになる予定です。
text: Azu Satoh
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