◆夫婦円満の秘訣は「仕事帰りにドン・キホーテで買い物」
松丘：ビートたけしさんの番組で、たけしさんが名付け親になる企画があったんです。芸人として参加したら、収録中にちょうどチャイムが鳴った。そうしたら笑いが起きて、「お前はチャイムだ」って名付けられたんです。人前で言えないようなコンビ名を覚悟していたので（笑）、覚えやすい名前で良かった。
――コンビでは、どのような活動をされていますか？
松丘：夫婦コンビでは3か月に1回、ネタを披露するライブをやっています。でも夫婦コンビだと、家でネタ作りをしている最中に、赤プルがコロコロで部屋の掃除をしだすんですよ。それが許せなくて。「今、ネタ合わせ中だ」って言うと、今度は洗濯物を取り込む。それが凄く嫌ですね。
――夫婦喧嘩は起きたりしますか？
松丘：ライブのネタでスベると、「なんでもっと練習をしなかったんだ」って芸人同士の喧嘩になるんです。だから家に帰るまでの間に、お笑いの話はすべて済ませる。途中から夫婦に戻って家に着く。最初はその切り替えが難しくて、家に帰ってもコンビを引きずって喧嘩になっていた。今は言いたいことがあれば外で話して、家には持ってこないって決めた。昔はそれがうまくできなくて、喧嘩ばかりしていました。
松丘：僕らを笑顔にするのは、ドン・キホーテなんですよ。ライブでミスをして気まずくなっても、帰り道でドンキに寄って買い物をすると、「ティッシュがなくなっていたわ」とか、店に入った時点で夫婦になっている。自然とコンビから夫婦に戻れるから、困った時はドンキに行くのが一番いい。
――コンビから夫婦としての日常に戻るのですね。
松丘：ドンキに行くと気づいたら5000円くらい使っていて、“行かなきゃよかったかな”って思うくらい行っていますね（笑）。あと、猫を飼っているので、猫も共通の癒やし。猫や犬がいると、家のなかの雰囲気が全然違う。ピリピリしたり落ち込んでいると猫が寄り添ってくれる。猫を飼うのもお勧めです。
――だんな松丘さんは日常生活の中で、喜びを見つけるのが上手いんでしょうね。
松丘：今はつらいことがあっても、家に帰ったら奥さんがいるだけでもありがたい。ちょっとした幸せがあるわけじゃないですか。僕は一日一回奥さんの笑顔を見るために笑わせている。赤プルに「今日も綺麗だね」って言っていたら、結婚してから綺麗になったって評判なんですよ（笑）。
松丘：赤プルから「婚約指輪を買って欲しい」って言われた。でもお金がなかったので、「僕にお金を預けたら買ってきてあげるよ」って言って5万を貰った。10万円の指輪をあげたいじゃないですか。だからパチンコに行こうと思って（笑）。そうしたら3万負けて。「値段札を外してください」って言って箱に入れて「5万の指輪だ」って言って渡したんです。 喧嘩をした時に、「今まで隠していることあったら全部教えて」って言われたから、「実は2万だったんだ」って言ったら、赤プルはゲラゲラ笑っていました。
――だんな松丘さんは立ち直るのが早いと話していましたが、困った時はどのように対処していますか？
松丘：僕は社会保険料などの支払いで困ったら役所にすぐ電話をするんです。「支払いを待ってください。来月まとめて払います」って。そうしたら待ってもらえます！ よく闇バイトに手を出した人が「保険料を溜めてしまった」って言うんですが、役所に電話したら良いって思うんですよ。ちゃんと誠実に事情を説明する。僕は役所の人とも仲良く、マネージャーとも仲良く、そして夫婦はドンキに行けば円満（笑）。
――男性は孤立しやすいとも聞くので、松丘さんのように周りに頼る能力も重要なのですね。
松丘：自分だけの力で生きていこうと思っても、今の時代は難しいですよ。僕は奥さんも稼いでくれるし、一緒にコンビの仕事もできる。今はウーバーから無事故で帰ってこれただけで感謝できる。小さなことで良いので楽しいことを見つけると、笑顔でいられますよね。
最近、漫才協会のなかで軽音楽部を作った。いまはバンドをやるのも楽しくて、55歳で青春を謳歌しています。この暗い世の中は、喜びを見つけて楽しくやりたいことをやった方が良いですよ。
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つねに後ろを振り返ることなく、小さなことに感謝をしながら笑って過ごしている松丘さん。その笑顔に周りの人たちも集まってくるのかもしれない。
＜取材・文／池守りぜね、撮影／藤井厚年＞
―［だんな松丘（松丘慎吾）］―
【池守りぜね】
出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。X（旧Twitter）：@rizeneration
