◆両者の間には“天と地ほどの差”がある

確かに星野源自身や楽曲そのものに罪はないのは当然のことです。しかし、問題とされている人物が深く関わった事実が刻まれている楽曲を歌唱することが与え得る社会的な影響も、決して無視できるものではありませんでした。
同じく性的暴行で禁錮30年の判決がくだったアメリカのR&B歌手、R・ケリーがストリーミングサービスから削除されたり、レコードレーベルから契約を解除されたりしたケースなどからもわかるように、「地獄でなぜ悪い」を取りやめにすることは、決して過剰な対応ではなかったのです。
以上を踏まえると、両者には天と地ほどの大きな差があります。
◆aespaへの批判は拡大解釈の結果?
aespaへの批判は、いわば言いがかりに近いものです。“きのこ雲のようなデザインを原爆に見立てて面白がっているから紅白に出すべきではない”という主張は、素人による思い込みに過ぎません。一方、星野源の「地獄でなぜ悪い」変更に至った経緯は、その真逆です。たとえ2024年の時点では当事者間で和解が成立していたとしても、その後の裁判では性加害の事実が認定された人物に関係する楽曲は好ましくない…そうした客観的判断を積み重ねたうえでの総合的な決定だったからです。
つまり、“aespaでなぜ悪い”という話なのです。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

