
台湾の洋菓子はここ十年ほどで目覚ましい進化を遂げている。外国人パティシエが腕を振るう店はもちろん、海外で学んだ台湾人パティシエが手がけているところもあり、いずれもおいしさを競っている。ダックワーズやカヌレのほか、最近注目を集めているのはユニークな素材を用いた創作マカロン。餡に台湾茶やフルーツ、地酒などを使用し、台湾らしさを表現している。今回紹介するのは新竹に旗艦店をもつ2軒。台湾に暮らすフランス人パティシエのレイモンドさんが創業した『HABIBI』
と、今春台北に進出した『MANO MANO』。両者とも本場フランスの作り方をベースとし、地元素材をふんだんに盛り込んで独自の世界をつくりあげている。台湾土産の新顔として喜ばれそうな存在だ。

台湾を愛するフランス人職人が作るマカロン。
「本場フランスのマカロンを台湾に広めたい」というレイモンドさんが2014年に創業。マンゴーやタロイモなど、台湾素材を使用し、これまでに100種類ほどを開発。店では常時40種類を扱う。珍しいのは、台湾が誇るカバランウイスキーや、南投県産の有機栽培のバニラを用いたもの。さらにフランス人にも好評だという塩漬けの卵黄味まである。写真中央のオレンジと深緑色の2色の生地のものは、鉄観音茶味のガナッシュとキンカンジャム入り。ほろ苦さと甘酸っぱさが見事に調和している逸品だ。なお、台湾人は控えめな甘さを好むため、通常レシピよりも糖分を20%カットしているという。その分、素材本来の風味が際立ち、メリハリのある味わいに仕上がっている。
HABIBI
ハビビ
DREAM PLAZA店/台北市信義區松高路11號B2 02−2568−1088 11:00~21:30(金土〜22:00) 無休 1個75元、10個以上購入すると70元。


多彩な味が楽しめるアイデア満載のマカロン。
何よりもマカロンが好きだというオーナーのアンさんがフランスで洋菓子づくりを学んだ従兄と組み、2019年に創業。ラインナップは季節によって替わるが、棚には常時十数種が並ぶ。「バランスの良い重層的な味を作りたい」とのことで、餡には複数の素材が用いられている。たとえば鉄観音茶&ラズベリー味、ライチ&バラ味、ライム&レモン味など。さらにマーマレード世界大会で金賞を獲得した〈好食光Keya Jam〉の柑橘ジャムにウイスキーやコーヒーを加えたものも評判。一口味わうごとに口の中で変化する香りと食感がたまらない。期間限定商品も多く、XO醤入りや唐辛子入り、さらに恐竜やハートの形をしたものまで登場。その豊かな発想と予想外の味の連続に圧倒させられるはず。
MANO MANO
マノマノ
誠品南西店/台北市中山區南京西路14號B1 02−2581−0338 11:00~22:00(金土~22:30) 無休 1個85元。常温保存できるものもあり。

文・写真/片倉真理
※この記事は、No. 144 2025年12月号「&Taipei」に掲載されたものです。
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台北在住ライター・コーディネーター 片倉 真理

1999年から台北に暮らす。台湾に関する書籍の執筆、製作のほか、雑誌のコーディネートなども手がける。台湾各地を隈なく歩き、料理やスイーツから文化、風俗、歴史まで幅広く取材。著書に『台湾探見』、共著に『台湾旅人地図帳』(共にウェッジ)、『食べる指差し会話帳』(情報センター出版局)など。

