◆過酷なロケを乗り切るためのモチベーション

「無事にロケを終えて帰ったら、当時唯一のネタ見せ番組だったNHKの『爆笑オンエアバトル』のオーディションに参加させてもらえる——。そんな約束はありませんでしたが そういったことがあると勝手に自分に言い聞かせ、それを希望にしていました。これだけ頑張ってるんだから事務所もさすがにそれくらいのご褒美を与えてくれるだろうと思ったんです。でも帰った後も何もなかったんですよ」
軟禁同然の地獄のロケをなんとか終えたが、話はこれで終わらない。後日行われたスタジオでの収録、番組ではヒロシさん以外にも複数の芸人がさまざまな職人のもとに派遣されたが、過酷さでは群を抜いており、文句なしの優勝。ペアの温泉旅行券を貰ったが、それを使う機会はなかった。
「さすがに過酷な映像だったこともあって優勝しましたが、ペアの温泉旅行券を受け取ることはありませんでした。番組が出さなかったわけではなく、事務所のマネージャーが勝手に使ったからです。もうふざけんなよって話なんですけど」
◆ギャラはまさかの…
続けてヒロシ氏は「温泉旅行券をもらえなかったことよりもひどかったことは、ギャラが2万5千円しかなかったことですね」と話した。なお、単純計算で日給にしてみると、1日あたり約417円。住み込みで働いていたが、派遣先の会社とは雇用関係にはなかったため、そこからは1円の給料も貰っていなかった。
「ロケの間の収入が完全にない。そのうえ2万5千円って本当にどうしようもないです。もちろんここから源泉も引かれてますしね。家賃も払ってないし、携帯電話も止まってる。おまけに ウチに出入りしてた誰かが俺のレンタルビデオ店の会員証で勝手に借りて返却しなかったらしく、その請求が8万円。ビデオ屋に文句を言っても『もう請求は回収業者に引き渡したからウチじゃ対応できない』と突き返されて、仕方なく払いました。とにかく帰ってきてからも地獄でしたね」

【ヒロシ】
芸人。1972年、熊本県生まれ。04~05年、「ヒロシです……」で始まる自虐ネタで大ブレイク。その後、低迷期を経てYouTubeで配信したソロキャンプ動画を機に再起を果たす。現在は個人事務所ヒロシ・コーポレーションの代表のほか、自身のキャンプブランド『NO.164』のプロデュース、さらにロックバンド『スパイダーリリー』のベーシストなど多方面で活動。今回の『ヒロシのネガティブ大全』(自由国民社刊)のほか、多数の著書がある。
取材・文/高島昌俊
撮影/根本麻由美
【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

