鉄筋コンクリート(RC)住宅のリフォームを検討し始めたものの、木造との違いや費用感がわからず、不安を感じている方も多いと思います。
築年数が経つにつれ、「外壁のひび割れや雨染みが目立つ」「冬場の底冷えが辛い」「間取りが現在の暮らしに合わない」といった、RC住宅ならではのお悩みは深刻になりがちです。
この記事では、鉄筋コンクリート住宅のリフォームを成功させるために不可欠な知識を網羅的に解説します。構造上の注意点から、断熱性向上の具体的な解決策、間取り変更の可能性、費用相場、そして失敗しないリフォーム会社の選び方まで、専門家の視点で詳しくご紹介します。
1.鉄筋コンクリート住宅のリフォームで実現できること
鉄筋コンクリート住宅のリフォームでは、どのようなことが可能なのでしょうか。代表的なリフォーム内容をご紹介します。

1-1.間取りの変更|広々とした大空間に・2つの部屋をつなげる
鉄筋コンクリート構造の建物は一般的に木造よりもスパン(柱と柱の間の距離)が大きいのが特徴です。この大スパンの特性を最大限に活用し、間仕切り壁を取り払って大きなリビングをつくったり、個室をつなげて広々とした間取りを実現することも可能です。
ここで注意しなければならないのが、鉄筋コンクリートの構造形式です。鉄筋コンクリート住宅には、主に「ラーメン構造」と「壁式構造」という2つの構造があり、どちらの構造かによってリフォームの自由度が大きく異なります。
ラーメン構造柱と梁(はり)で建物を支える構造です。主にマンションや高層の建物で採用されています。
建物を支えている柱や梁以外は「雑壁(ざつかべ)」と呼ばれる壁で、これらは撤去できるため、間取り変更の自由度は高くなります。
柱や梁がなく、壁(耐力壁)で建物を支える構造です。主に5階建て以下の中低層マンションや戸建てで採用されています。
建物を支えている耐力壁は撤去できないため、ラーメン構造に比べて間取り変更の自由度は低くなります。
| 比較項目 | ラーメン構造 | 壁式構造 |
|---|---|---|
| 間取り変更の自由度 | 高い | 低い |
| 撤去できる壁 | 構造上重要な柱と梁以外は、 比較的自由に撤去可能 |
耐力壁以外の壁は撤去可能 |
| 新たな開口部 (ドア・窓など) |
一般的に、 耐力壁でなければ可能 |
耐力壁に設けることは、 建物の強度を著しく低下させるため 原則として不可能 |
| 注意点 | 柱と梁の位置が重要 | どこが耐力壁にあたるか、 図面確認と専門家による 判断が必須 |
正確な判断には図面(竣工図や構造図)の確認が必要ですが、ご自身でも簡単にチェックできるポイントがあります。リフォーム会社に相談する際の参考にしてみてください。

部屋の「角」や「天井」を見る
柱や梁の出っ張りがある⇒「ラーメン構造」の可能性大
出っ張りがなく壁がスッキリしている⇒「壁式構造」の可能性大
1-2.窓の増設・交換|明るく開放的な空間に・窓の気密断熱性能を向上
建物の構造耐力に大きく影響するため、鉄筋コンクリートの壁に新たに窓を設けるのは非常に難しい工事とされています。特に壁式構造では、建物を支える耐力壁に穴を開けることになるため、原則として不可能です。
窓の増設・新設ラーメン構造の場合は、鉄筋コンクリート壁の穴開け(ハツリ工事)が必要になりますが一応可能です。ただし、住まいながらの工事は難しく費用も高額になる傾向があります。
窓の交換既存の窓を新しいものに交換することは可能です。
断熱性や気密性の高いサッシに交換したり、内窓を設置(二重窓に)したりすることで、住まいの快適性を大きく向上させることができます。
1-3.水回りの移動|使い勝手の良い位置に変更・1階にまとめてバリアフリー化
キッチンや浴室、トイレなどの水回りの移動はもちろん可能です。ただし、木造住宅に比べて位置の制約が多くなる点に注意が必要です。
排水管を通せない梁や壁による制約水をスムーズに流すためには、排水管に一定の勾配(傾き)が必要です。
鉄筋コンクリート造の建物は木造よりも梁が大きいため、床下のスペース(ふところ)が十分にないと、この勾配が確保できず、移動できる範囲が限られてしまいます。
また、新規の排水管を梁に貫通させるためやむを得ず「RC壁や梁のコア抜き(穴あけ)」を検討する際には、構造強度を落とさないかを十分に検証する必要があります。
多くの鉄筋コンクリートの建物では、上下階を貫く給排水管がPS(パイプスペース)にまとめられています。このPSの位置は原則として動かせないため、水回りの位置はPS周辺に限定されることが多くなります。
PS以外の箇所で配管を下ろすためには、コンクリートスラブ(床版)のコア抜きが必要になります。その際、鉄筋や配線・配管に干渉しないかのX線調査や、強度を落とさないかの構造検証が必要となり、リフォームの難易度が上昇します。
1-4.老朽化対策|外壁のひび割れ・雨漏りを解消したい
鉄筋コンクリートの住宅は耐久性が高いイメージがありますが、決してメンテナンスフリーではありません。定期的な外壁や防水のメンテナンスが建物の寿命を延ばす鍵となります。
コンクリートのひび割れ(クラック)と中性化コンクリートは本来アルカリ性ですが、空気中の二酸化炭素で中性化すると、内部の鉄筋が錆びて膨張し、ひび割れ(クラック)が発生します。特に0.3mm以上の「構造クラック」は雨水が浸入しやすいため、早急な補修が必要です。
| 現象 | 症状 | 原因 | 対策方法 |
|---|---|---|---|
| クラック | コンクリートの表面に 発生するひび割れ |
乾燥による収縮 地震や地盤沈下 建築時の施工不良 など |
により各種工法で充填 |
| 爆裂 | コンクリートの表面が 剥がれ落ち、内部の 鉄筋が露出した状態 |
クラックからの内部浸水 鉄筋の腐食 |
錆びた鉄筋の防錆処理 剥がれたコンクリートの充填 |
| 中性化 | コンクリート内部の アルカリ性が失われ、 鉄筋が錆びやすくなる 現象 |
空気中の二酸化炭素 酸性雨などの内部浸食 |
含浸材の注入など |
鉄筋コンクリート住宅は陸屋根(平らな屋根)が多いため、定期的な防水工事が必須です。
一般的に、屋上やベランダの床防水の耐久性は約10年と言われています。ウレタン防水やシート防水など、既存の防水層の状態に合わせて最適な工法を選定する必要があります。
築50年を超えるような老朽化した鉄筋コンクリート住宅のリフォームについては、こちらの記事も併せてお読みください。
築50年の鉄筋コンクリート住宅リフォーム費用を解説!建て替えと比較も
鉄筋コンクリート住宅の資産価値維持のためには定期的なメンテナンスが必須!定期的な点検と適切な補修・メンテナンス(外壁塗装、防水工事など)を行うRC住宅は、同程度の築年数の物件より高い資産価値を維持しやすい傾向にあります。
参考に、鉄筋コンクリート住宅に必要なメンテナンスの内容と周期(サイクル)を下記の表にまとめてみましたので参考にしてください。
| 修繕時期の目安 | 修繕内容 |
|---|---|
| 築12~15年 | 屋上防水、外壁シーリング工事等の外部防水工事 |
| 築24~30年 | 給水引き込み管や分電盤、火災報知器等の各種設備更新 外部防水工事2周目 |
| 築36~45年 | 外壁/サッシ/ベランダ手すり等外部部材更新 外部防水工事3周目 |
| 築48~60年 | 構造躯体調査・設備更新2週目 外部防水工事4周目 |
参考:改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル(国土交通省)
※この表は、一般的な分譲マンションの大規模修繕計画を基にした目安です。実際の住宅の状態や環境によって修繕時期や内容は異なる場合があります。
1-5.快適性の向上|断熱リフォームで「夏涼しく冬暖かい家」に
コンクリートは熱を蓄えやすい性質(蓄熱性)があるため、鉄筋コンクリート住宅は「夏は暑く、冬は寒い」と感じることが少なくありません。
こうしたお悩みも、断熱リフォームによって一年中快適な室内環境を実現することが可能です。
既存の壁の内側に断熱材を施工する方法です。内壁裏側のコンクリート躯体にウレタンフォームを吹き付けたり、スタイロフォームを貼り付けるなどの工法があります。
メリット:住みながらの工事も可能で、外断熱より費用が安い傾向にあります。
デメリット:断熱材の厚みにより部屋が少し狭くなります。また、壁内結露のリスクがあるため、正しい施工知識が必要です。
外断熱(外壁側からの工事)既存の外壁の外側を断熱材で覆う方法です。断熱材としては板状のスタイロフォームやネオマフォームが多く使用され、その上にサイディングボードや吹き付け塗装、タイルなどの外装を施して仕上げます。
メリット:断熱効果が高く、内部で結露が発生しにくいのが特徴です。
デメリット:工事費用が高額になる傾向があり、かつ外観のデザインが変わってしまうことも難点です。

無機質で洗練されたデザインがお好みの方は、コンクリート打ちっぱなしの壁を仕上げとして見せることも選択肢のひとつです。しかし、先述の通りコンクリートは熱を伝えやすい性質を持つため、断熱対策を怠ると「夏は暑く、冬は寒い」住まいになりがちです。
また、室内外の温度差が大きいと、コンクリート壁面に結露が発生しやすくなります。コンクリートの質感を活かしつつ快適性を高めるには、断熱リフォームとセットで検討することが効果的です。同時に、換気システムの導入など室内の空気を適切に入れ替える計画も重要になります。
2.鉄筋コンクリート住宅のリフォーム費用相場
ここでは、リフォームにかかる費用の相場についてご紹介します。
2-1.【工事内容別】リフォーム費用相場
| 工事内容 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|
| フルリノベーション | 700万円〜1,500万円以上 | 内装をすべて解体するスケルトンリフォームの場合 間取り変更の規模による |
| ひび割れ補修 | 10万円〜100万円 | エポキシ樹脂充填など ひび割れの程度と範囲により変動 |
| 耐震補強工事 | 50万円~1,000万円 | 耐力壁の増設、ブレースの設置、開口部の縮小、コンクリートの増し打ちなど |
| 外壁塗装 | 80万円〜150万円 (30~40坪程度の住宅の場合) |
使用する塗料のグレードによる |
| 屋上・ベランダ防水 | 100万円〜200万円 | 防水の種類(ウレタン、シート、アスファルト)や面積による |
| 断熱リフォーム | 200万円〜300万円 | 内断熱か外断熱か、施工範囲による |
| 窓・サッシの交換 | 1箇所あたり5万円〜20万円 | カバー工法や内窓設置など工法による 開口部を新設する場合はさらに高額 |
| 内装リフォーム | 1部屋あたり20万円~80万円 | 壁紙の張り替え、フローリングの張り替えなど |
| キッチン交換 | 50万円〜200万円 | システムキッチンのグレード、壁・床の内装工事の有無による |
| 浴室交換 | 100万円〜250万円 | 在来工法からユニットバスへの変更は高くなる傾向 |
| トイレ交換 | 20万円〜60万円 | 配管工事の難易度で大きく変動 |
2-2.RC住宅のリフォームは木造よりも高くなる傾向
鉄筋コンクリート住宅のリフォーム費用は、工事内容によっては木造に比べて高くなる傾向があります。主な理由は以下の通りです。
解体・撤去費用がかさむコンクリートの壁や床の解体(ハツリ)は、木造に比べて手間と時間がかかり、専用の機材も必要になるため費用が高くなります。また、解体で出るコンクリートガラは、木材よりも重く量も多いため、産業廃棄物としての処理費用も高額になります。
専門的な技術と知識が必要鉄筋コンクリートの構造を正確に理解し、適切な施工ができる職人や業者は限られています。
木造リフォームでは大工職人が多能工として複数の仕事をこなす傾向があるのに対し、鉄筋コンクリートの建物は工事が細分化されるため、その分人件費が比較的高くなる傾向があります。
(参考)鉄筋コンクリートのリフォームは騒音が心配?
鉄筋コンクリート壁の解体を伴う場合は、木造住宅に比べて工事の音や振動が大きくなる傾向があり、工期も長めになるため注意が必要です。
騒音・振動への対策コンクリートを壊す「ハツリ工事」は、非常に大きな音が発生します。工事前に必ず近隣住民へ挨拶回りを行い、工事の期間や時間帯(音が出る作業は平日の日中に行うなど)を丁寧に説明することが不可欠です。また、防音シートで建物を覆うなど、騒音を少しでも軽減する対策を講じる必要があります。
余裕を持った工期設定コンクリートの解体に時間がかかることや、新たにコンクリートを打設した場合の乾燥・養生期間が必要になることから、木造に比べて工期が長くなる可能性があります。
近隣への丁寧な対応と、緻密で納得の行く工程の提示をしてくれるかという点も、リフォーム会社を選ぶ重要なポイントとなります。
2-3.リフォーム費用を賢く抑える3つのポイント
[1]補助金・助成金の活用住宅のリフォーム費用を抑えるための各種の補助金・助成金制度が国や自治体から提供されています。特に、断熱改修や耐震補強、バリアフリー化のリフォームは対象になりやすいため、まずはお住いの自治体窓口に問い合わせることをおすすめします。
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【2025年度版】二世帯住宅のリフォームで活用できる補助金制度を徹底解説
[2]設備のグレードを見直すキッチンやユニットバスなどの住宅設備は、グレードによって価格が大きく変わります。こだわりたい部分とコストを抑える部分にメリハリをつけることが大切です。
[3]複数の会社から相見積もりを取る必ず3社以上のリフォーム会社から見積もりを取り、費用と提案内容を比較検討しましょう。これにより、適正な価格を把握するとともに、悪徳業者と契約してしまうリスクを避けることができます。
なお、鉄筋コンクリート住宅での工事が得意な会社を複数社探すのは、非常に手間がかかり、エリアによっては難しいこともあります。そんな時はリフォーム一括見積もりサービスを活用するのがおすすめです。「リフォームガイド」なら、各社の得意不得意をよく知る専任のコンシェルジュが、鉄筋コンクリート住宅のリフォームが得意な優良会社をご紹介します。

