
年齢を重ねるにつれ、子育てや仕事の責任が増し、忙しさに追われる日々のなかで「自分のことは後回し」になっている人も多いでしょう。しかし、ある日突然その“後回し”の代償が、人生を揺るがすかたちで現れることもあるようです。獅子にひれ氏の著書『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ』(ごきげんビジネス出版)より、著者の「転機」となった出来事とそこから得た教訓をみていきます。
50歳を目前に意識した「人生の折り返し」
誰にでも人生の転機となる出来事があります。私の場合、それは予期せぬ病気からのはじまりでした。「自分らしい生き方」に気づくきっかけとなった、必然ともいえる、そして誰にでも起こり得るような私の体験についてお話しさせてください。
40代後半だった私は息子とふたり暮らしで、仕事に追われる毎日を送っていました。当時勤めていた会社は自宅から遠く、往復4時間かけて通勤。そのため自宅と会社を往復するだけの生活を十数年続けていました。休日は家のことに追われるか、疲れ果ててただただ休息するか、いま思うとよくやっていたなと思う生活スタイル。睡眠時間は毎日4~5時間ほどでした。
ちょうど息子の大学卒業を間近に控え、教育費用のおわりが見えはじめてきた頃。私はまもなく50歳という節目を迎え、ふと人生の折り返し地点にきたような気持ちになりました。
山登りでたとえると、見えない山頂を目指していたと思っていたのが「あれ? もしかして、下山している?」と、登りではなく下っていると感じ、その道のりの長さも見えてきたような気がしたのです。これが「人生の折り返し」を意識する、ということなのかもしれません。
そうして「老後資金も、そろそろちゃんと考えないと」と思いはじめるようになりました。それまで30年近く会社勤めを続けてきたなかで、「定年」という言葉がようやく自分事として考えられるようになってきたのです。すると両親の介護も気になります。まだまだ先のことだと思っていた「自分の老後」がリアルなものになってきました。
「定年まであと何年だっけ……そもそも定年まで働くの? 定年まで体力もつかな……」と自問自答するようになりました。
仕事、子育て…「自分の人生」はいつも二の次だった
子育ても一段落し、キャリアを積み重ねることが生きがいだった時期でもあります。一方で、振り返るとこれまで仕事と子育て中心で「自分の人生」はいつも二の次でした。
年末年始やお盆休みに学生時代の友人と会うことはありましたが、趣味らしい趣味をもつこともなく、地域活動に参加する余裕もありません。会社のつながり以外で新しい人と出会う接点も少なく、同年代の定年を迎える世代の女性と話をする機会もほとんどありませんでした。
これから先どう生きたいかを考えてこなかった自分に対し、焦る気持ちが出てきました。心のどこかで漠然とした不安を抱えていました。
「このまま働き続けられるのかな……」「息子が家を出たあと、私はひとり暮らしをしていけるのかな……」
そんな想いはあっても、何か行動するでもなく、日々のいろいろな締め切りに追われるなかで、いつも後回しにしてきました。
しかし転機は50代前半で訪れました。
