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不労所得を夢みた私がバカでした…世帯年収1,000万円・50代夫婦の〈資産運用失敗記〉【CFPの助言】

不労所得を夢みた私がバカでした…世帯年収1,000万円・50代夫婦の〈資産運用失敗記〉【CFPの助言】

なにもしなくても勝手にお金が入ってくる……不労所得を夢みる人は決して少なくないはずです。ただし、不労所得を得るためには“それ相応のリスク”があることを認識しておく必要があります。50歳の会社員男性とその妻の事例をもとに、資産運用に潜むリスクと退職金を守るための賢い選択をみていきましょう。株式会社FAMOREの山原美起子CFPが解説します。

早期退職を決断した50歳男性

「働かずにお金だけもらえたらいいのに」

誰もが一度は夢見る不労所得。特にまとまったお金を手にすると、その思いはよりいっそう強くなります。しかし、憧れだけで行動に移すと、大切な資産を失うことになりかねません――

IT企業に勤める信吾さん(仮名・50歳)は、年収800万円のサラリーマンです。妻の奈緒さん(仮名・55歳)も働いており、世帯年収は1,000万円ほどあります。信吾さんは、連日の残業や休日出勤、管理職としての重責から、心身ともに疲弊する日々を送っていました。

そんなとき、会社からある知らせが届きます。

――早期退職制度の実施に関するお知らせ

「これはチャンスだ」と感じた信吾さんは、帰宅してすぐ妻に相談しました。

「退職金は上乗せで3,000万円だぞ!? これだけあればなんとかなる。俺に任せろ」

「少し休んで、働き方を見直したら」という妻の助言も聞かず、信吾さんは強気です。

気圧された奈緒さんは強く止めることができず、信吾さんは念願の早期退職を実現させました。

信吾さんが早期退職を急いだ理由

実は信吾さん、以前から羽振りのいい同僚が家賃収入で不労所得を得ていると聞き、強い羨望を抱いていたのです。

「退職金を元手に不動産投資を始めて夢の不労所得生活だ!」

そして、“初心者限定”を謳う不動産セミナーで「利回り10%以上の物件があります。こんな優良物件はなかなかでてきませんよ。今日いらっしゃった方々は本当にラッキーです」と勧められた信吾さん。

「まとまった資金を得たタイミングでこんなことがあるなんて……神さまが味方しているとしか思えないな!」

そもそも不動産投資に意欲的だったこともあり、セールストークに乗せられてすっかり舞い上がった信吾さんは、退職金の大半を頭金に充ててローンを組み、地方のアパート1棟を購入しました。

打ち砕かれた「不労所得」の夢

ところが、現実は思いどおりにはいきませんでした。契約時には満室だったアパートは、2年足らずで3割が空室に。物件の競争力も弱く、なかなか次の入居者が決まりません。

さらに、金利上昇でローン返済の負担が増すなか、外壁にひび割れが見つかり想定外の修繕費も発生。不労所得どころか、貯金を切り崩す事態に陥りました。売却しようにも、築古で流動性の低い物件の価値は下落しており、借金だけが残ります。

「ねえ、どうするつもりなの」

不安が募る妻から問い詰められ、信吾さんはひたすら謝ることしかできませんでした。

「不労所得を夢みて安易に飛びついた俺がバカだった。すまない……」

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