客側でもそうなのだから、従業員として働いていればなおさらだろう。今回は飲食店スタッフ経験者たちに聞いた、迷惑客エピソードを3つ紹介する。

◆「連絡先教えてよ」息子の連絡先を交換させようと強要する父
大学生の神田真理さん(仮名・20歳)のアルバイト先は、とある庶民的な居酒屋だ。「お店の常連客に、年齢の離れた男性2人組がいたんです。一人は60代くらいで、もう一人は35歳くらいだったので、上司と部下かなと思って接客していました。こんなに世代が違うのにいつも2人で、よっぽど仲がいいんだなあくらいの印象しかない、普通のお客さんでした」
神田さんがバイトにも慣れて2人の顔も覚えたころのこと。いつもより酔っ払った調子の“上司”から、呼び止められる。
「めちゃくちゃハイテンションに、『ねえちゃん! いつも一緒にいるこいつ、俺の息子なの! いい年して彼女もいないからさぁ、連絡先の交換だけでいいからしてやってよ!』って言いだしたんです」
◆息子のほうも“おじさん”の年齢なのに
実は親子だったことに困惑する神田さんをよそに、ひとり演説を始める“お父さん”。「いかに息子がいい奴で、にもかかわらず恋愛にはなぜか縁遠いのだと、ノンストップで話すんです。その日は店も暇で逃げづらかったし、そもそも私は断るのが苦手なタイプで……。交換するまで解放してもらえないと思って、しょうがなくLINEを教えました」
困っていたのは神田さんだけではなかった。
「息子さんもまったく望んでないんですよ。私に好意があるとかではなく、お父さんの『恋愛しろスイッチ』がたまたまあのタイミングで入っただけのようでした。なので結局、簡単な挨拶だけを送りあっただけでやりとりは終わりました。面倒にならなくてよかったんですけど……むしろ息子に腹が立ちましたね」
なぜか。
「本当に気があるなら酔っ払いだなあで流しますけど、そうじゃないのに暴走してる自分の父親を止めずに傍観したうえ、あとから謝ることすらしなかったわけで。そんなのはいい奴でも優しい奴でもないから、モテないのも当然だろと思いましたよ。見た目が冴えない以前に、私からすれば息子のほうも普通に“おじさん”の年齢なのに。振る舞いが幼稚ですよね」
なかなか手厳しいが、たしかにモテなさそうな人物である。

