叱るのは逆効果…親の変化に気づいた家族ができること
高齢者が配偶者との死別などをきっかけに、「衝動買い」や「買い込み」に走ってしまうケースは決して珍しくありません。その背景には、孤独や喪失感といった心理的要因が潜んでいることが多く、無駄遣いが家計を圧迫し、大切な老後資金を切り崩している可能性もあります。
もしも親の変化に気づくことができたら、そのタイミングで次のようなサポートをするとよいでしょう。
1. 「共感」姿勢で寄り添う
頭ごなしに叱責せず、まずはなぜその行動をとったのか、本人の話に耳を傾けましょう。行動の要因が一時的なものか、あるいは認知機能低下など病気のサインなのかを見極めることも大切です。
2. 買い物を「見える化」して自覚を促す
「一緒に片付けよう」と声をかけ、必要なものと無駄なものを選別します。特に、賞味期限の切れた食品などを本人の手で処分させると「もったいない」という自省の念が生まれ、衝動買いを控える動機づけになります。
3. 「代わりの楽しみ」を提案する
悪い習慣をむやみに禁止するよりも、「このお金を貯めて、今度一緒に温泉に行こうよ」などと、前向きなお金の使い方を提案しましょう。“代わりの楽しみ”があるだけで気持ちが安定し、買い込みの頻度も減っていく効果が期待できます。
4. 「お金の管理」を見直す
通帳やカード明細を一緒に整理し、定期的な支出点検を習慣化しましょう。現金やクレジットカードそのものを取り上げると信頼関係が壊れてしまうため、カードの利用限度額を下げるなどの工夫をするとよいでしょう。
5. 専門家に相談する
状態が深刻な場合や、一人では抱えきれない場合には、「地域包括支援センター」など専門機関への相談も検討しましょう。母のその後を生活を支える手助けとなります。
親子の「その後」
この一件を機に、初枝さんはビデオ通話が復活。さらに、復活しただけでなく、2人は家計簿アプリを共有するなどお金を「見える化」する取り組みをスタートさせました。
恵美さん「買ったつもりで貯金して、お金が貯まったら旅行に行こう」
娘からそのように提案を受けた初枝さんは「旅行積立」をはじめ、いまではどこに行こうかと相談するのが新たな楽しみのひとつとなっているそうです。
「あのときはどうかしていたわ……。お父さんがいなくて寂しい気持ちは変わりないけれど、もっとあなたに頼るべきだった。それに、これからの人生も楽しまないとね」
初枝さんは明るく振り返り、新たな人生を前向きに歩み始めています。
住まいは、心の状態を映す鏡であるとよくいいます。離れた土地に住む子どもが親の住まいを定期的に確認することは難しいかもしれませんが、帰省時などにこうした小さな「SOS」のサインを見逃さないことが、親と資産を守る最大の砦となるでしょう。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー
