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トランプ大統領が中国、ウクライナ、中東よりも最優先する危機とは/倉山満

トランプ大統領が中国、ウクライナ、中東よりも最優先する危機とは/倉山満

―[言論ストロングスタイル]―

トランプ政権の対外政策には明確な優先順位がある。中国、ウクライナ、中東――。しかし、それらすべてに優先する「第ゼロ」と呼べる問題が存在する。モンロー主義に基づく南北アメリカ大陸への介入だ。いま、石油産油国ベネズエラで事態が緊迫している。日本は何もすることもできないが、アメリカの優先順位が揺らがないか、注視すべき局面が迫っている(以下、憲政史研究家・倉山満氏による寄稿)。

アメリカとベネズエラの良い関係を表す地図
カリブ海を挟んでアメリカと向かい合うベネズエラ。1999年に反米派のチャベス政権が発足し、’13年以降はマドゥロ大統領が継承。深刻な経済・政治危機に直面している 画像/Adobe Stock

◆トランプ政権の対外政策と明確な優先順位

 ベネズエラが、きなくさい。と言っても、ほとんどの日本人には意味が分からないだろうが。

 アメリカのドナルド・トランプ政権の対外政策は、明確に優先順位がつけられている。

 第一が中国である。世界の覇権国家であるアメリカにとって、挑戦者の中国の台頭は許せない。いくら「分断」が著しいとはいえ、共和民主の党派関係なく、「中国に追い抜かれても良い」と主張する政治家はワシントンにはいない。中国の台頭を抑えるのは、超党派の合意だ。トランプ政権は、対中政策を第一に置く。

 第二は、ウクライナ。米中に次ぐ第三の大国であるロシアが当事者であるウクライナ紛争は、重要政策である。よって第二。

 第三に、中東。アメリカは中東の石油が無くても生きていける。メキシコ湾の石油こそがアメリカの生命線だし、いざとなればシェールガスを掘ればよいと考えている。だが、アメリカ陣営に属する国々(日本も含まれる)にとっては、中東の石油は生命線だ。自由主義陣営の盟主のアメリカは、子分たちを守る為にも、この地域に関与しなければならない。そうでなければ親分面ができないから、利益線だ。現在、紛争が続いているガザに石油は出ないが、無関係な場所に紛争が飛び火するのが中東である。現に、ガザで進攻を続けるイスラエルとイスラムの盟主を自認するイランの間に紛争が勃発、アメリカが「十二日間戦争」で収拾したのは周知の通り。

◆優先順位「第ゼロ」とモンロー主義

 先日トランプ政権が、怨念渦巻くアゼルバイジャンとアルメニアの紛争を仲介したが、すべてはこの優先順位に基づき、後顧の憂いを断って中国と対峙する腹積もりなのだ。トランプ個人はアゼルバイジャンとアルメニアの国名も間違えるほど何もわかっていないが、政権の優秀さはなめてはいけない。ロシアの縄張りであるこの地域に関与することで、くさびを打ち込んだ(本誌9/2・9合併号参照)。

 その上でトランプ政権には、優先順位の「第ゼロ」がある。それがモンロー主義の範囲だ。アメリカ政府は(共和民主関係なく)、南北アメリカ大陸を「庭」と看做す。第5代ジェームズ・モンロー大統領が「南北アメリカ大陸にヨーロッパは干渉するな」と宣言したのがモンロー主義。アメリカ合衆国が大国になるにつれてモンロー主義が実体化した。そして、中南米諸国に対して自国のように振舞っている。ロシアは旧ソ連から独立していった国を今でも自分の国の様に扱うが、アメリカは一度も自国の一部になったことがないのに、中南米諸国を自国のように扱うのが、モンロー主義だ(本誌1/28号参照)。

 南米北部に位置するベネズエラは、もちろんモンロー主義の対象になる。


配信元: 日刊SPA!

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