◆「ノーベル平和賞」が意味するもの
そこへ、マチャドのノーベル平和賞受賞である。これが何を意味するか。国際社会、少なくとも西側陣営は、トランプのベネズエラへの軍事力行使を容認しているのである。トランプ個人はノーベル平和賞を欲していると伝わるが、簡単には渡したくない。しかし、実利は認める。なにせ、アメリカの庭でアメリカが何をしようが、勝手だからだ。
しかもマチャドはご丁寧に、トランプ大統領に「この賞をささげる」とSNSに投稿した。トランプは悪い気がしない。それだけではなく、トランプが武力行使でマドゥロ政権を転覆させたら、自分が傀儡政権の首班を務める気があるとのアピールに他ならない。
トランプ政権の懸念は一つ。マドゥロを取り逃がしてジャングルに潜り込まれ、抵抗されることだ。そうなればアメリカは引けなくなる。だから、準備に余念がない。
さて、日本は何ができるか。何もできない。アメリカが自分の「庭」で行動する話だからだ。しかし、情報を抑え、アメリカの優先順位がおかしくなるような苦境にならないかだけは観察しておかねばならない。
―[言論ストロングスタイル]―
【倉山 満】
憲政史研究家 1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『噓だらけの日本中世史』(扶桑社新書)が発売後即重版に

