たとえば、8回に1点ビハインドで相手の攻撃を迎える場面。終盤で逆転するためにも、まずはセットアッパーが抑える。そんなプランを描いてみたものの、ふたを開けてみると先頭打者にいきなり四球。それだけならまだしも、続く2人の打者にも四球が続き、打たれてもいないのに、ノーアウト満塁というピンチを背負ってしまったら……。
※本記事は、江本孟紀著『長嶋亡きあとの巨人軍』より適宜抜粋したものです。

◆セットアッパーが四死球を出したら罰金を取りなさい
守る野手としては、堪忍袋の緒が切れる寸前だろう。むしろ「気持ちよく打たれたほうがいい」と考えさせられるものだ。なぜ四死球がダメで、安打はいいのか。その理由は2つある。1つは、「野手が動いているかどうか」である。
先頭から2者続けて安打を打たれたとする。すると守っている野手は、「次も打球が飛んでくるかもしれないぞ」と身構えるわけだ。緊張感を保っていれば、いざ打球が飛んで来たときにサッと対処できる。場合によっては、ダブルプレーを取れることも十分あり得る。
だが、四球を連発してしまうとそうはいかない。野手は一歩も動くことができないまま、「またボールを連発するんじゃないのか」といったように投手に対して疑念を抱く。そこにいざボールが飛んできたら、一歩目の反応が遅れてしまい、傷口が広がってしまってもおかしくない。
「四死球は投手のエラー」とも言われるが、見えないミスを誘発してしまうリスクがあるからだ。せっかく反撃の狼煙が上がっていても、つまらない四死球で試合のテンポが乱れれば、野手が守り疲れてしまって、攻撃がおざなりになってしまう。
◆試合終盤でピンチを迎えることのデメリット
もう1つは、「攻撃のリズムが作りにくくなる」からである。守備の話にも通ずる話である。
序盤に5点以上リードされたものの、どうにか1点差まで迫って終盤を迎えたとする。このとき相手の打線をきっかり3人で抑えてくれたらいいのだが、たて続けに四球を出し、安打を打たれ、ワンアウト満塁のピンチを迎えてしまった。
野手からすると、「いい加減にしてくれよ」とうんざりしてしまうもの。万が一、無失点で切り抜けたとしても、気疲れしているなかで攻撃を開始することになる。こうなると、攻撃のリズムが作りにくい。せっかくの反撃ムードがしぼんでしまって、あっけなく凡退して終わってしまいがちだ。

