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人や地域の課題解決の伴走者、「社会教育士」

「社会教育士」として活動する人の多くは、身近な課題との出合いがきっかけ

――お話を伺っていると、「社会教育士」として活動する方々は、日頃から地域や社会の課題に目を向けて活動しているように感じます。

鈴木:結果的に地域や社会の課題に取り組んでいます。しかし、多くの「社会教育士」は、「情報弱者である高齢者」や「ワンオペ育児で悲鳴を上げる母親」、「不登校やひきこもりの子を持つ親」、「日本語を話せない外国人児童」といった、いままさに困難を抱えている目の前の人と向き合い、「個人的なことは社会的なこと」と捉え返すことで、学習に組み立てていく。そうして始まった学習の学習者が、学習サークルを立ち上げて、地域に学習を提供する側になっていくことで、学習者にも地域にも変容が起きるのだと、私は捉えています。

岸本:おそらく、活動の幅も最初は個々の当事者に向けたものが多いはずです。ただ、そういった一つ一つの時間と空間の共有が、つながりを生み、同じような課題を抱えた人たちを呼び、サークルや団体という少し大きな学習体へと形を変えるのではないでしょうか。結果として、地域や社会が抱える課題を解決するための大きな輪となっていくものと私は考えています。

鈴木:よく、「社会教育士制度は地域コミュニティーのためにできた」「学校教育と社会教育の連携のためにできた資格」といわれていますが、始まりは、個への支援であるということを知っていただきたいです。

――今後、「社会教育士」が増えることで、社会にどのような影響があると考えますか。

岸本:まず挙げられるのが、「誰も取りこぼさない社会」が実現に近づくのではないかと考えています。生産性や効率化が重視され、日々急速に進化する社会から一人も取りこぼさないことも、「社会教育士」の大きな使命と言えるでしょう。

鈴木:現代は、あらゆる分野で市場化が進んでいます。保育や介護においては、ポイント制や保育所のフランチャイズ化が進んでいます。もちろん便利になることはいいことですが、代わりにお金では買えない人間関係や助け合い、お互いがお互いを支え合う互恵性(ごけいせい)の価値が失われているような気がします。

「社会教育士」の存在が大きくなり、一人一人の声を聞く力が増えれば、少し前の日本では普通だった「お互い様」の文化が再構築されるはずです。誰にとっても優しい社会の実現も夢ではないでしょう。

――いま「社会教育士」の方が抱えている課題はありますか。

岸本:活動拠点や課題の内容によっては、情報共有の機会が少なく、また役割も明確ではなく、実践事例も少ないため、講習や養成課程で得た学びをどのように活かしていけばいいのか戸惑ってしまう「社会教育士」も多いと聞いています。

鈴木:ほかにも、「社会教育士」として活躍できる場は増えているものの、多くがボランティアであり、仕事として確立されていない点が挙げられるでしょう。日本社会教育士会としては、「社会教育士」の社会的地位と、それに伴う収入の確保まで視野を広げて支援していく必要があると考えています。

個人や社会が抱える課題を解決し、誰もが暮らしやすい社会をつくるために私たち一人一人ができること

最後に、個や社会が抱える課題を解決し、誰もが暮らしやすい社会をつくるために私たち一人一人ができることをお二人に伺いました。

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