
更年期におけるさまざまな変化の中でも、とりわけ人に相談しにくいのが「腟」に関すること。
特に多くの女性が直面すると言われるのが、膣の乾燥や性交痛です。
そこで今回は東洋医学でその原因にアプローチして、腟の潤いと弾力を守る養生法をご紹介します。
なぜ更年期になると腟が乾燥するのか

「大きな声では言えないけれど、最近、腟の調子がちょっとおかしい⋯⋯」
こんな悩みを持つ更年期の女性は、決して少なくないでしょう。
更年期を迎えると、腟にも変化が現れます。代表的な変化として挙げられるのは、腟の乾燥、性交痛、かゆみ、萎縮感など。更年期の不調の多くは五臓の「腎(じん)」の力の低下によるものだということは「更年期の養生 Vol.1」でもお話した通りなのですが、腟の不調もまたこの腎が深く関わっています。
腎とは体の中の“生命力の源”となるものですが、その働きには腟を含む生殖器の働きも含まれています。腎の力は35歳頃から衰えはじめ、その後は加齢とともに低下するため、更年期になる頃には腟の不調が現れやすくなるのです。
腎の“生命力の源”となるものは、大きくふたつに分かれます。ひとつは体の水源となる「腎陰(じんいん)」、もうひとつは熱源となる「腎陽(じんよう)」。更年期になるとこのうち特に腎陰が不足しやすくなるため、体全体が水分不足になりがちに。腟の潤いも不足しやすくなるため、腟が乾燥して粘膜がヒリヒリしたり、分泌液が減少して性反応が低下するなどの変化が見られるようになります。
性交痛の原因は「腎陰(じんいん)」と「腎精(じんせい)」の不足

また、更年期になると性交痛に悩むケースも増えてきます。あるニュースサイトの調査では、50〜60代の女性のうち約2人に1人が性交痛を経験しているとのこと。性交痛が原因で性生活を避けてしまう人も少なくないようです。
東洋医学では、性交痛もまた腎陰の不足が原因のひとつだと考えられています。腟の潤いが不足することで摩擦に弱くなり、痛みが生じやすくなるのです。
さらに腎には、腎陰や腎陽が生まれるもととなる「腎精(じんせい)」と呼ばれるものが蓄えられており、この腎精の不足も性交痛を招く要因となっています。腎精とは一般的に「精力」と呼ばれるものに近く(イコールではありません)、腎の力の土台となるもので、加齢によって減少する傾向があります。そしてこの腎精が減少すると、腟の粘膜が薄くなる、弾力や伸びが低下する、腟口が細くなる・硬くなるなどの萎縮感が生じる傾向があり、個人差があるものの、性交痛を招きやすくなります。
つまり、更年期に多い腟の乾燥や性交痛をやわらげるには、腎陰や腎精の減少を抑え、補うことが養生になると言えます。

