男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:彼女と2泊3日の福岡旅行。38歳独身主義男が急に結婚を意識した女の言動とは
「愛ちゃん…。ごめん、やっぱり僕たち違うと思うんだ」
交際半年で、博之から突然そう言われた。
急に寒くなり、「そろそろ冬物のコートも準備しておかないとね」なんて話していた矢先の出来事で、まったくその兆候すらなかっただけに、私はひどく混乱した。
「…どうして?」
半年前、私には別れそうで別れられない彼氏がいた。でも、博之がグイグイ来たので、彼と別れて博之と付き合うことにした。それなのに半年で別れを告げられるなんて納得がいかない。
「ヤダ。私は別れない」
そう地団駄を踏んでみたものの、博之の決心は固かった。
結局別れを告げられてから2週間も経たないうちに、彼の家へ置いていた荷物がすべて私の家に送られてきて強制終了となった。
Q1:リードしてくれる年下の彼氏♡彼的にはどう思っていた?
「すっごいタイプです」
博之と初めて会った時、彼から突然そう言われたことはかなり衝撃的だった。私の方が3歳年上だったけれど、そんなことは気にも留めなかったらしい。
「年齢とか、関係ないんで」
そう言って、博之はグイグイときた。
今年で30歳になる博之は、IT関連の会社に勤めている。細身で背が高く、どこかひょろっとした印象の人だ。会話が面白くて知的だったので、私は会うたびに彼に惹かれていった。
「でも、私彼氏いるんで…」
そう素直に伝えると、逆に博之は燃えたのかさらに追ってきた。
「ですよね…でも俺、愛さんのこと諦めません」
そんな勢いに押される形で(ちょうど別れようと思っていたタイミングでもあったので)、私は彼氏と別れて博之の元へ行くことにした。
「博之くん、よろしくね」
そう言うと、彼はひどく喜び、そして私に誓ってくれた。
「マジっすか!絶対、大切にします」
その宣言通り、博之は交際後もかなり優しく、理想的な彼氏だった。
目黒にある博之の家に、私が週末泊まりに行く…というデートが定番となっていた私たち。
家でごろごろするだけではなく、博之はちゃんとどこかへ連れ出してくれるし、たまに料理もしてくれる。
「愛ちゃん、どこか行きたいところある?」
「どこでもいいなぁ。ヒロ君的には?どこかある?」
「買い物に行きたいかも」
「それなら、ちょうど観たい映画があって。ヒルズでやっていたはず」
「何ていうタイトル?」
結局その週末は博之が映画のチケットを取ってくれ、私たちは映画デートをすることになった。
「あ〜面白かった。ヒロ君、晩御飯どうする?」
映画館を出ると辺りはすっかり暗くなっており、19時を過ぎている。お腹も空いたし、家より外で食べたい気分だった。
「ヒロ君、せっかくだし近くで食べてから帰らない?」
「うん、そうしようか。愛ちゃん、何か食べたい物ある?」
「なんだろう…何でもいいな」
「お肉、お魚。和食系、中華系…」
「焼肉はパス、かな」
何となく、焼肉以外がよかったので思ったことを伝えてみる。でもそれ以外は特に思い浮かばないし、何よりも博之が食べたい物に合わせる方が、私的には居心地が良い。
「了解。じゃあ和食にしようか」
やっぱり、彼の中では食べたい物は決まっていたらしい。
私よりも博之の方が我が強いというか、意思が固い。だから基本的に、私が彼に合わせるスタイルが多かった。
「ヒロ君、近くでいいお店、知ってる?」
「どこかあったかな…。探してみる」
こうして、手際の良い博之はパパッとお店を決め、予約をしてくれた。
「男性は、頼られた方が嬉しい」とよく聞く。それに輪をかけて博之は行動が早いので、基本的に私が彼に合わせたり、引っ張ってもらう…というスタイルで落ち着いていた。
Q2:男が別れを決めた理由は?
こうして特にケンカもなく、驚くほど順調だった私たちの関係。ただ博之の方が、仕事でビッグプロジェクトを任されたらしく、9月くらいから急に忙しくなった。
それでも、彼はマメに連絡をくれるし、優しかった。
― 博之:愛ちゃんごめん!今週末の買い物、一緒に行くのちょっと難しいかも…。家でゆっくり休みたくて。
本当は、私の家の電球が切れたので、一緒に買い物へ行って、その後彼に電球を替えてもらう予定だった。
でも買いに行けなくなったこと。そして会えなくなったことに対して、私もうるさいことなんてもちろん言わない。仕事で忙しいことはわかっているし、ちゃんと相手をいたわる返信をする。
― 愛:ヒロ君、お疲れさま。電球は、また次の時でいいから、まずはゆっくり休んでね。
ここで、ワガママなんて言っていないし、疲れた相手を労うこともできる良い彼女だったと思う。
それに、会えた時は思いっきり甘えていたし、癒やしの存在にはなれていたと思う。
「あ〜疲れた」
久しぶりのデートで、だいぶ疲れ切っていた博之。それに対して私は文句も言わず、ニコニコとしながら話を聞いてあげていた。
「お疲れさま。忙しかったんだね」
「そうなんだよ。ごめんね、ほったらかしにして」
「それはいいよ、全然。気にしないで」
忙しくて会えなかったことを責めもしない。一応3歳年上の余裕を見せつけたつもりだ。
「久しぶりに会えたし、愛ちゃんがやりたいことをしよう」
そう言ってくれるものの、疲れているだろうし、博之優先で良い。
「私は特にしたいこととかないし、ヒロ君の好きなことしようよ。久しぶりの休みでしょ?」
「うーん…。外は天気悪いし、出かけるのも微妙だもんね。家で何か観ながら、ダラダラするのはどう?」
「いいね、そうしよう!」
寒くてお天気の悪い日は、家に引き籠るに限る。
こうして、私たちはデリバリーを頼み、好きな映画を観ながらまったりと家で過ごした。
「お酒飲みたくなってきたな〜。ビールでも買いに行こうかな」
「いいね。じゃあ私の分も、何かついでに買ってきて」
「何がいい?」
「何でもいい。適当に何かお願いします」
「わかった」
そして博之がお酒を買ってきてくれたので、さらに私たちのお籠りは楽しくなり、結局土日とも、一歩も外に出ずに引き籠った週末デートになった。
それでも、私は楽しかった。
「愛ちゃん、本当にどこにも出かけなくていいの?」
日曜の午後、心配そうに博之が聞いてきてくれたけど、私的には楽しかった。
「うん。私は、こうしているだけでも十分楽しいから」
「そうなんだ。だったら良いのだけれど」
一緒にいられるだけで良かったし、幸せだ。心の底からそう思っていた。
それなのに、しばらくすると急に別れを切り出してきた博之。
ワガママも言っていないし、彼のやりたいことに合わせたし、仕事が忙しくても文句ひとつすら言っていない。
それなのに、どうして博之は大好きだったはずの私を振る、なんてことができたのだろうか…。
▶前回:彼女と2泊3日の福岡旅行。38歳独身主義男が急に結婚を意識した女の言動とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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男が別れを決意した理由は?

