
日本人にとって憧れの旅行先であると同時に「治安はあまりよくない」イメージがあるニューヨーク。本記事では、ファッション/テクニカルデザイナー・あっち氏の著書『ニューヨークとファッションの世界で学んだ 「ありのままを好きになる」自信の磨き方』(KADOKAWA)より一部抜粋・再編集し、ニューヨーク在住23年目の著者の実体験をもとに、現在のニューヨークの実態と、有効な防犯対策のポイントを解説します。
ニューヨーク=治安が悪い?…在住者が語るリアル
日本では「ニューヨーク=治安が悪い」というイメージがあるかもしれませんが、私個人の経験でいえば、身の危険を感じる出来事に遭遇したことはありません。これはとてもラッキーなことだと思います。
しかし、これからニューヨークに遊びに来る方に向けて「日本と同じくらい安全だよ!」とは言い切れない部分が多いのも事実。ここではニューヨークの治安や防犯面で気をつけるべきことを、お伝えしていこうと思います。
街なかでは、重度の薬物依存症の人に遭遇することも珍しくありません。支離滅裂な言葉を叫んだり、明らかに挙動不審だったり、彼らの行動は予測不能なので、遭遇したときは、目を合わせず静かに距離を置くのが正解です。最近は、合成麻薬フェンタニルの問題も深刻ですが、前かがみな姿勢のまま動けなくなったり、ふらふらと彷徨う「ゾンビ状態」のほうが、襲われる危険性は低いといえるでしょう。
物乞いをするホームレスも少なくありません。「今日食べる物すらない」というほど困窮している人もいれば、本当はそこまで困っていないにもかかわらず、困っているフリをする「プロの物乞い」もいるため、区別がつきにくいのが実情です。
私はトラブルを避けるために基本的に無視をしてしまうのですが、男性は物乞いに寛容な人が多い印象です。特に寒さの厳しいクリスマスの時期には、小銭を渡している人もよく見かけます。
コロナ禍以降は、ヘイトクライムの問題が深刻で、アジア系をターゲットとした事件が目立っているといわれています。幸い私自身はニューヨークでヘイトクライムの被害に遭ったことはないのですが、過去にオハイオ州へ旅行に行った際には、「日本人に売る酒はない」「国へ帰れ!」という明らかな差別発言をされたことがありました。
また、レストランなどで非白人という理由から、良い席に案内されないこともあります。けれど今では「窓際の席に案内して」など、自分からリクエストできる胆力が身についています。
南アフリカ旅行での恐怖体験から学んだ「自衛策」
少し話がそれますが、私が体験した中でもっとも危険な思いをしたのが、南アフリカ旅行での出来事でした。まず、ケープタウンでは人々の目つきが殺気立っているのを体感しました。そしてダーバンという街では、あやうく拉致されかけました。
ダーバンでは、ドアTOドアのタクシー移動を心がけ、服装は黒人ラッパーのように目深にフードを被り、「性別不明」にするなど自衛策を講じていました。しかし、数日経った日、Tシャツと帽子の軽装で大通りを歩いていたら、3人の男たちに羽交い締めにされ、白昼堂々、誘拐されそうになったのです。
私は体が大きかったため、すぐさまその場で暴れて難を逃れましたが、もし小柄な女性だったら今ここにいないかもしれません。昔はコンプレックスだった高身長が、こんなときに命を救ってくれるとは……人生なにがあるかわかりません。貴重品は靴下や帽子の中に分散させていたため、財布ひとつ取られただけで済みましたが、この経験から「ニューヨークはなんて治安がいいんだ」と感じるようになったのも事実です。
自衛策としては、足元はスニーカーがマスト。地下鉄や街なかで事故や事件などに巻き込まれた際、すぐに逃げられるようにするためです。私自身、華奢なハイヒールを履くことはほとんどありません。
さらに「これはヤバそう……」という場所を歩く場合、私は護身用としてカギを握って指の間に挟んでおくこともあります。ただし、トラブルに遭遇した際、反撃をすることでかえって相手を刺激しかねないので、これはあくまで「お守り」としての心がけです。
米国では、街なかで「そのシャツ、素敵ね!」など知らない人と世間話をするのは一般的ですが、”Hey, sexy”などいきなり話しかけてくる不審者は、スルーするのが正解です。激しいケンカをしているところに遭遇したときも同様です。正義感から仲裁をしたり、変な人に注意したりすると、逆ギレされ、反撃されるおそれもあります。
万が一、旅行中に犯罪や盗難に巻き込まれたら、日本の110番や119番に該当する「911」にダイヤルを。「ジャパニーズプリーズ」と言えば、日本語での通話もできますので、ぜひ頭の片隅に入れておいてくださいね。
あっち
