孫への支援を行う際の問題と対策
安達さんのようなケースは、珍しくありません。教育費の高騰、共働き世帯の負担増加、そして祖父母世代の資産の存在から、「祖父母の支援を前提とした教育費」となる家庭が少なくありません。とくに問題なのは、支援が“都度”、“行き当たりばったり”で発生することです。
・事前の計画がない
・どこまで援助するかの線引きもない
・終わりのタイミングも見えない
これでは、老後資金は当然削られていきます。息子世帯は助かるかもしれませんが、祖父母が老後破綻のリスクを背負ってしまえば、結局は家族全体の負担になります。老後資金は有限であり、“自分たちの生活を守ること”は、むしろ家族全員の未来のために必要なことです。
だからこそ、孫への支援は「ライフプランの一部」として考える必要があります。その上で注意すべき点は以下の3つです。
1. 支援の「上限」を決める
都度の相談に応じて支援するのではなく、「年間〇万円まで」などあらかじめ枠を決めておく。
2. 支援の「対象」を明確にする
「入園・入学など節目のみ」「お祝い事だけ」など、“なんでもかんでも”ではなく、支援をするタイミングや目的を明確にし、想定していたタイミングで支援を行う。
3. お金以外の支援も立派なサポート
休日に預かる、習い事の送迎を手伝う、勉強の面倒を見る、などの支援も、お金の支援以上にありがたいサポートです。
“予算の範囲での援助”に切り替え
安達さんは夫と話し合い、「息子家族が来るたび、毎回のように行っていた援助はやめる」「入学や誕生日など、節目の支援やプレゼントのみ行う」方針を決めました。
家計を見直した結果、年間20万円までなら無理なく孫をサポートできることもわかりました。そして、思い切って息子夫婦に伝えました。
「応援したい気持ちは変わらないけれど、私たちも年金生活でそれほど余裕はないの。介護が必要になる可能性だってあるし、将来どれだけお金が必要になるかわからない。あなたたちに迷惑をかけないためにも、必要なお金は確保しておきたいから、これからは毎回じゃなく私たちができる範囲で協力させてちょうだいね」
勇気を振り絞って伝えると、息子は「無理させてたんだね、ごめん。いままで本当にありがとう」。そう言って、お嫁さんも一緒に頭を下げてくれました。
そしてその日の帰り際、「ばあば、また遊ぼうね!」と話す孫の笑顔を、“お金の不安”なしに見つめることができました。支出も心も軽くなり、以前のように自然な笑顔で孫を迎えられるようになったのです。
