◆学歴と世渡りの上手さは別物
――ヨシオさんのように学歴において優秀な人が、そもそも希望の職に就けずに低収入に甘んじて、婚活においては女性から値踏みされて蔑まれるというのは、やりきれないですね。ヨシオ:もちろん私はある程度、勉強を頑張ってこられたと思いますが、学歴と世渡りの上手さは別物なので、その点については受け入れるようにしています。たとえば現在の職場でも、学歴は高卒でも仕事のできる人は多く存在します。仕事は、その場その場の状況判断を適切で迅速に行える能力のことであり、私にはあまり自信がない分野です。自分にない能力を持つ人を、素直に尊敬します。
また婚活も、女性に対して「この人と結婚すれば幸せになれる」と安心してもらえなければ、成婚に至らないと思うんです。誠実に生きるとか、真面目に生きてきたことも大切ではありますが、それ以上に、それをアピールできることが重要ですよね。ある意味では、これまでの人生で学ばなかったものを、社会人になってから学べたと思っています。
◆「あきらめずに努力を継続できる性格」を褒めたい

ヨシオ:場数をこなすうちに、だんだんと女性との会話、行ったことのあるデートコースが増えてきました。また身だしなみとして、歯のホワイトニングなども行いました。最低限のコミュミケーション能力とエスコート力が身に付いたところに、妻との出会いがありました。妻はハキハキしていて、他人任せではなく自分で決めたい性格で、とてもきれいな人。私にない部分をもともと持っていて、それが合致したのも大きかったと思います。自分について褒める点があるとすれば、比較的あきらめずに努力を継続できる性格だったことでしょうか。
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人の本音が剥き出しで渦巻く婚活の世界。いかにも誠実で真面目なヨシオさんが絶望しなかったのは、現実を受け入れる謙虚さがあったからではないか。自らの足りない部分と向き合う作業は愉快ではないが、その忍耐の先にしか見えない光景もある。現在奥様と結婚6年目、お子さんも2歳になるというヨシオさんの笑顔を見ると、そう思えてくる。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

