◆視線を外さない…高校生の“無言のプレッシャー”

「座ってスマホを見ていたら、隣の男子高校生が画面をのぞいていました。しかも堂々と……」
スマートフォンの画面をスクロールするたびに、高校生の目線も動いた。
「もう、“完全に見てるよね?”って思いました。あそこまで正面からのぞく人ははじめてでした」
佐久間さんはたまらず、「なに?」と聞くと、高校生は真顔でこう言ったのだとか。
「いや、別に」
その後は沈黙が続いたが、再び視線を感じたようだ。
「今度はスマホじゃなくて、私の顔をじっと見るんです。あまりにも真剣な目で、正直ちょっと怖かったですね」
思わず見返すと、高校生は真面目な顔で言ったという。
「誰かに似ている感じがして……」
突然の発言に、佐久間さんは言葉を失った。
「誰に似てるんだよって思いました(笑)。しかも距離が近いし、肘も何回か当たってくるし、落ち着かない時間でした」
駅に着くまで、会話はそれきりだった。結局、誰に似ているのかはわからないまま……。
「悪気はなかったんでしょうけど、人との“距離の取り方”ってむずかしいですよね。ほんの少しの距離感の差で、こんなにも疲れるんだなと思いました」
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

