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「強さ・優しさ・コミュ力・美しさ」を備えていなければ“弱者”?エンタメと広告が作りだす“新たな男性像”という呪い

「強さ・優しさ・コミュ力・美しさ」を備えていなければ“弱者”?エンタメと広告が作りだす“新たな男性像”という呪い

◆男の成功の証し“背景高層ビルおじさん”

新たな生きづらさ 男に広まる[弱者感]

新たな生きづらさ 男に広まる[弱者感]
転職エージェントの広告とイギリスの徴兵ポスターにも似た構図がある。目指すのは画一化された“理想”だ(写真は小林氏提供)
そうした広告を日々目にすることで、社会的な成功のイメージが画一化されていく。

「わかりやすいのが、人材広告などにある『背景高層ビルおじさん』。いい大学を出ていい企業に入社し、会社で上り詰める……という成功イメージの“記号”です。この姿を目指さないといけないという強制力が強いので、そうなれない人はツラい。

公共空間での女性の広告表現の場合、『この表現は性差別的だ』と指摘しやすい一方で、男性向けの広告は『この表現はどうなのか?』と言われることが少ない。そして、イケてる男性というイメージがとても狭い。こうした男性向けの広告のあり方は問題だと思っています」

また、男性の“美”を促す広告からも、我々は強い影響を受けていると続ける。

「男性美容業界の売り上げが’10年代末比較で2倍近に伸びているように、今は『外見を磨くのも強者の証し』という風潮がありますよね。痩せろ、鍛えろ、脱毛しろなど、できるのにやらないヤツはダメという、二項対立のロジックです。

こういった“強者”の表現方法は、昔から変わりません。例えばカルバン・クラインの下着の広告は1983年と’25年を比べてもほぼ同じ。ギリシャ彫刻のような肉体美を持つ男性が下着をはいている。こうした姿が男性美の永遠のルールになっている」

◆自分の心を守る余白を確保することが大切

重要なのは、広告でうたわれるような成長は「仮初めの希望だと知ることだ」という。

「成長するための努力は大切ですが、男性に求められる能力は『強さ+優しさ+コミュ力』など、すべてをこなさなければならなくなっている。しかも、今後もアップデートは続き、逃げ道はますます少なくなるでしょう。

それに応え続けるのは“無理ゲー”です。だからこそ、過剰な煽りに乗らず、無理ゲーは無理ゲーとして認めて、自分の心を守る余白を確保することが大切になるような気がします」

今後も複雑化しながら増え続ける“男らしさ”の呪縛から解放される日は来るのか。

【英文学者 河野真太郎氏】
専修大学国際コミュニケーション学部教授。専門は英文学、イギリスの文化と社会。著書に『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)など
新たな生きづらさ 男に広まる[弱者感]
英文学者の河野真太郎氏

【作家 小林美香氏】
ジェンダー問題に精通。著書に『その〈男らしさ〉はどこからきたの? 広告で読み解く「デキる男」の現在地』(朝日新書)など
新たな生きづらさ 男に広まる[弱者感]
作家の小林美香氏

取材・文/週刊SPA!編集部

―[新たな生きづらさ 男に広まる[弱者感]]―

配信元: 日刊SPA!

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