◆男性のスペックはすべて数値化される
![新たな生きづらさ 男に広まる[弱者感]](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2025/11/1764289301978_wb6o23ucnr.jpg?maxwidth=800)
女性の好みだけでなくAIのアルゴリズムによる自動選別も行われ、高スペックではない男性は苦戦を強いられるのだ。婚活市場に詳しい経営学者の高橋勅徳氏は、「かつてはその人の『価値』だったものが、『前提条件』になってしまっている」と分析する。
「あらゆる条件が可視化されて比較が容易になったことで、もはやそれは評価の対象にはならず、理想の相手を見つける過程での“足切りライン”として機能し始めています。過酷な選考をクリアしたところで、ライバルは同じスペックの相手ということになる。『相手に好かれよう』と個人があとから努力して積み上げてきた要素が意味をなさなくなり、ただ敗北感を覚える男性が増えたのです」
◆選ぶ側の女性はもはや“バイキング状態”
また、恋愛市場における人間の過剰な数値化は「生身の人間という感覚を欠如させている」と続ける。「男性が女性にアプローチするという婚活市場の慣例上、選ぶ側の女性の目には、もはや“バイキング状態”に映る。女性はより好条件の男性を追い求め続け、男性は延々と取捨選択され続ける構図。市場の力学に照らし合わせても、これは当然の結果です」
恋愛における数値至上主義がさらに加速すれば、一部の強者が総取りする傾向が強まり、「恋愛市場の弱者はアプリ内で見えない存在になるしかない」という。
「恋愛弱者の男性にとって、マッチングアプリは希望を持って踏み込んでも、自分の無価値さをカネと時間を使って繰り返し確認させられるだけの残酷なツールになり始めています。しかし、一度市場の原理に乗った流れを止めるのは、ほぼ不可能。女性からの過度な選別を止めるためには政府による規制が必要でしょう。とはいえ、国が出会いを管理・斡旋するなんて、また別のディストピアです」

