◆陰謀論に乗っ取られる

4月29日には、国内最大の反ワクチン団体「WHOから命をまもる国民運動」が「財務省解体・厚労省解体デモ」を行う。初めて行われたデモ行進では「財務省解体!」「消費税廃止!」「ワクチン反対!」「エボラを持ち込むな!」「GHQ出ていけ!」などまとまりのない主張が展開された。代表の林千勝に至っては「(闇の勢力に対し)国民は立ち上がった!立ち上がってないのは政府と国会と厚労省だけだから!…財務省とね!」と、名目を一瞬忘れてしまっていた。
だが、この日の参加者の数は3月14日のそれを軽々と飛び越していた。そしてこの日以降、これを上回る規模の活動は行われていない。街宣の終盤、「ディープステートの手先 財務省解体!」の幟がはためく中マイクを握ったのは、昨年12月の第一回の街宣を主催した「風の吹くまま市民団体」の発起人だった。結局、解体されたのは「財務省解体」というスローガンの方だったのかもしれない。
「財務省解体デモ」はその後も定期的に行われているが、一時に比べて参加人数は遥かに少なく、メディアは見向きもしない。その一方、最近の現場では「13京円の隠し財産」などといった陰謀論とは一定の距離を置き、財務行政への正面からの批判を行う層が一定のコミュニティを形成しており、本来の姿に立ち返った雰囲気の街宣も見られる。皮肉なことではあるが、メディアやインフルエンサーからの注目を失ったことで、かえって運動の再編が進んだのである。
では、かつて「財務省解体デモ」に参加していた人々はどこへ行ったのか。後編では、運動から派生して生まれたもう一つの動きについて論じる。
<取材・文・写真/山崎リュウキチ>

